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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

ローズマリーの赤ちゃん 

ローズマリーの赤ちゃん [DVD]

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ブログをリニューアルしての一発目。

新装開店となった眼鏡堂書店が最初に扱うネタは、ホラー映画のレジェンド『ローズマリーの赤ちゃん』です。

監督は、『戦場のピアニスト』で有名なロマン・ポランスキー

彼は『戦場のピアニスト』でアカデミー監督賞の栄冠を手にしましたが、『戦場のピアニスト』のポランスキーは嘘っぱちです。

キ○ガイでヘ○タイでロ○コンと三拍子そろったポランスキーこそ我々の求めているポランスキー。高尚でお上品なポランスキーなどポランスキーではないのだよ。

……まあ、我々って誰だよって話なんですが。

 

それはおいといて。

ローズマリーの赤ちゃん』に話を戻します。

 

ひょんなことから知り得てしまった気のいい隣人たちの正体。

その切っ掛けが、アパートの壁が薄いことで聞こえてくる様々な生活音というのはなにやら現代的。もっとも、天下のダコタ・ハウスがレオパレス並みの薄い壁のはずはないんですけどね。

知ってしまった秘密から生じる恐怖と、妊娠中の若妻の情緒不安定とがあいまって、彼女はどんどんとやつれて狂っていく。

演じているミア・ファローは細身の美人だけど、大きくて落ち着きのない目が非常に神経質そう。そんな彼女が徐々に狂っていく様は、その病的な雰囲気と相まってまさに圧巻。悪魔主義者という実にホラー映画的なキーワードを扱いながら、ホントに怖いのはミア・ファローだったりする。

 

眼鏡堂としては、悪魔主義者というキーワードから連想されるようなホラー映画というよりは、妊娠という現象への恐怖を描いているように思う。

例えば、情緒不安定なミア・ファローはマタニティ・ブルーを連想させる。

68年公開であるというのを踏まえれば、お腹の子供が無事に生まれてくるのか分からない、もしかしたら障害を持って生まれてくるかもしれない、という不安は現在よりも大きかっただろう。まして、サリドマイド禍が社会問題となっていた当時、妊娠と出産に対して女性が抱く恐怖は、現在のそれよりも切迫したものだったに違いない。

そうでなくても、”自分の中に自分ではない別の生命が息づいている”という妊娠という現象そのものが、単純に考えれば異様な印象であることはぬぐえない。

確かに、それはとてもホラー映画的。

原作者であるアイラ・レヴィンもこのような社会問題に、当時隆盛を極めていたサイケデリック・ムーブメント、悪魔教などを組み合わせ、この『ローズマリーの赤ちゃん』を書いたとか。

 

まあ、それはいいとして。

話がそこで終わらなかったのが、この映画のレジェンドたる所以。

とにかく、観る前から非常にイヤ~な気分にさせてくれる。

 

ローズマリーの赤ちゃん』というタイトルと、監督がロマン・ポランスキーという時点で「ああ、あれか……」と一気にテンションが下がります。

その理由が、公開翌年の1969年に起きたシャロン・テート殺害事件。

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この人が、シャロン・テート。

職業は女優で、映画『吸血鬼』への出演をきっかけにして、68年にロマン・ポランスキーと結婚。この時シャロンは25歳。

写真を見ていただければ分かるように、最近のハリウッド女優にはちょっといないタイプの美人。

かわいい、というよりは美人。

もっと直球な言い方をするなら、”イイ女”。

正直、グッときます。

そんな彼女の勧めで、ポランスキーは『ローズマリーの赤ちゃん』のメガホンを取ることになったそう。

1968年の8月8日。ポランスキー邸を青年たちが襲撃。犯人たちはパーティーの招待客を含めた5人を刃物で惨殺します。このときシャロンは妊娠8か月。お腹の子供もろとも100カ所以上を刺されました。犯人はそのシャロンの血で壁に『PIG』と殴り書きし、現場から立ち去りました。

 

程なくして逮捕されたのはチャールズ・マンソン

サタニズムを信奉するカルト集団を率いていた彼は、ビートルズの『Helter Skelter』で人種間闘争の啓示を受け、『ローズマリーの赤ちゃん』を見て確信を抱いた結果、殺害(白人種の絶滅)を決行したと言われています。

一説では、ビートルズに影響を受けてミュージシャン活動をするも、才能がなかったため自慢の楽曲はレコード会社から門前払い。その逆恨みから、凶行に及んだとも。

真偽のほどはさておくとして、これがハリウッド映画史上に残る最悪の血塗れ事件『シャロンテート殺害事件』です。

 

劇中、明らかにサタニストと思われる集団が登場するところも不穏な空気を必要以上に高めます。

 

いわく有り気な予兆は他にも。

その最たるものが、映画の舞台となっているアパート。外観だけの登場とはいえ、見る人が見ればピンとくる。

アパートの名はダコタ・ハウス。言うまでもなく、ジョン・レノンマーク・チャップマンに射殺された場所です。

一応補足すると、ジョンが殺害されたのは80年で、『ローズマリーの赤ちゃん』は 69年なので、因果関係はゼロ。

とはいいながらも、この事件が映画に更なる箔を与えたのは間違いない。

 

 ポランスキー監督は、妻と子供を凄惨な事件で失い悲しみに打ちひしがれていましたが、何とか映画監督として復帰するのですが……。

その後、77年のスキャンダル。13歳のモデルの少女と性的な関係を持ったとして、少女とその母親から告訴され、大スキャンダルに発展。ちなみにその現場となったのは親友であるジャック・ニコルソンの家だったりするのですが。

裁判中に保釈された際、フランスへ高飛び。以後、一度もアメリカには入国していません。行けば捕まるので当然ですね。

他にもナスターシャ・キンスキーとは彼女が15歳のころから肉体関係があったなど、『戦場のピアニスト』で感動した人ほど、このポランスキー親分の本質を直視していただきたいと思います。

 

ともあれ、現実の社会問題を踏まえて作ったフィクションだったのに、その後現実に起こったさまざまな事件が絡み合うことで、より異形の産物へと変化した奇怪な映画。

この悪夢のような映画を、是非一度ご覧になってください。