眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

外道忍法帖/山田風太郎

外道忍法帖―忍法帖シリーズ〈2〉 (河出文庫)

山田風太郎忍法帖シリーズ。

最高傑作が『甲賀忍法帖』や『魔界転生』『忍者月影抄』なら、失敗作として扱われることの多いのがこの『外道忍法帖』。

ちなみに、前述した『忍者月影抄』が”忍法バトルの限界”へ挑んだ作品なら、この『外道忍法帖は”キャラクターを生み出すこととそのコントロール”に挑んだ作品。

作者である山田風太郎の実験的試みがあふれている。

 

大友十五童貞女VS甲賀卍谷15忍衆VS伊賀鍔隠れ15忍衆による三つ巴の血みどろの戦いを描いた時代小説なのだが、この時点で15+15+15=45人。

そこにクリストファ・フェレイラ、ミカエル助蔵、マリア天姫、松平信綱、由井正雪が加わり50人。

さらにそれぞれの陣営に属する重要なサブキャラクターが加わってくるので、人数はドンドン増える一方。

明らかに、やりすぎだ(笑)。

 

失敗作だの実験的作品だのと言われてはいるが、そこは天下の山風作品。そんじょそこらの凡作と比較してもらっちゃあ困る!!

だって実際面白いもん。コレ。

 

娯楽小説としてはまさに完璧。一部の隙もない。

山田風太郎の小説というと”奇想天外”や”荒唐無稽”という表現で語られがち。

しかも司馬遼太郎と比較して「所詮は……」などと半笑いで揶揄されることが多い。司馬遼太郎ばっかり読んでる世代なんかは特に。

大長編が多い割には、必ずダレがあって、広げた風呂敷を畳みきれない司馬遼太郎作品に対し、もともとが推理小説出身なので緻密な展開構造を得意で”娯楽作品こそ最も優れた文学だ”という信念を生涯忘れなかったのが山田風太郎

とにかく、彼の文体にはスピード感がある。これは娯楽作品には必要不可欠なものだ。

山田風太郎作品の最大の後継者は、たぶん少年漫画。

幽遊白書』『ドラゴンボ-ル』『スラムダンク』などなど、黄金期のジャンプマンガ特有のスピード感に近い。そのうえ、忍者は忍術発動時に技名を絶叫。これを少年漫画的と言わずして何と呼ぶ!

作者が医学部出身からか忍術の仕組みについての説明があるけども、これって『魁!!男塾』でいうところの民明書房だよね。

完全に一時期の少年ジャンプだ。

 

とはいいながらも、想定される読者はオトナ。

初期江戸川乱歩作品を彷彿とさせる、薄暗く後ろ暗い雰囲気でのエログロ&猟奇的。

特にこの『外道忍法帖』は三つ巴での血で血を洗う凄惨な殺し合いが中心にあるためか、とにかく人が死ぬ。三すくみ構造だと”一時的に手を組む”などということがありがちだが、そこは天下の山田風太郎。勢力同士が絶対に手を組むことがないように、きちんと整理してあるので余計なことを心配しなくていい。

忍法帖自体は各作品が独立いているものの、根底では設定で薄く繋がっていて、そういう隠れ設定みたいなものを発見しては、ニヤニヤ喜ぶ。

 

数少ないマイナス点を挙げるとすれば、 ある重要なアイテムを集めるというくだりは、集めるというよりは”集まってくる”というような感じなので少々ご都合的過ぎるようにも思えなくはないが、取り立てて不満を感じるようなものでもない。……などと知ったような口をきいた途端、まさかまさかの展開が(笑)。

なるほど、それなら納得だ(笑)

 

島原の乱天正遣欧使節などをからめ、当時異国との唯一の窓口であった出島があるところから長崎が舞台になっているのだが、ラストの一文に向かって長崎でなければならない必然性へと収斂していくのは圧巻。

ラストの幕引きの上手さとヒネり具合も、山田風太郎の特徴だ。