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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

オズの魔法使

映画【ファンタジー】

オズの魔法使 特別版 [DVD]

テレビでやっていたのを録画して見る。

アナと雪の女王』が大ヒット中なので、ミュージカル映画が見たくなった。

でも、どうせだったら見たことない映画だともっといいな、と思っていたのでグッドタイミング。

存在はバカでも知っているけど、見たことある?と聞かれると見てない映画。

不思議の国のアリス』は大好きで本も持ってるけど、こっちのほうは今の今まで手つかずだ。前から興味があったし、いろんな意味でちょうどいい。

 

オズの魔法使といえば、なんといってもコレ。


Somewhere Over The Rainbow / 虹の彼方へ - YouTube

 

セピア色の現実から虹色の夢の国への切り替わり方は、ベタすぎるほどにベタだけど、やっぱりグッとくる。

輝くような夢の世界を目の当たりにすると、テリー・ギリアム監督が常々口にする”夢見ることの大切さ”だったり、セリーヌの『夜の果てへの旅』の冒頭にある”目を閉じさえすればよい。そうすれば現実の向こう側だ”という言葉とかが次々に浮かんでくる。

『Somewhere Over the Rainbow』という曲は、LGBTの社会運動のテーマ曲だし、ゲイカルチャーにおいては”レインボーフラッグ”へと形を変えている。

ウソだかホントだかしらないが、ゲイやオカマの人たちにとってこのジュディ・ガーランドは一種のアイコン&アイドルなのだそうだ。

 

劇中でのドロシーは常にハイテンション。

これは演技というよりは、太りやすい体質だったジュディに対して製作会社が渡していたのは何と覚せい剤。そのうえクスリでハイになって眠れないと彼女が訴えれば睡眠薬を与えるというデタラメっぷり。

……怖いな、当時のハリウッド。しかもそれが普通って。

そんな彼女が少数派たちのアイコンになりえたのは、単純に彼女自身がそういう人だったから。

とにかくソッチ方面が奔放な人で、男も女も両方OK、複数プレイもドンと来い!!、MGMに所属していた当時はプロデューサー全員と寝たのが自慢という。

最初のダンナとの離婚原因はジュディがあるプレイ的なものを旦那に要求したところ、「そんな変態的なことをするなんて…」とドン引きされてしまったのが原因だとか。

そういう人なのであの当時にもかかわらず、同性愛に全く偏見なし。むしろ非常に理解を示した数少ない人間だったそう。

夢見る世界の中で自分らしく生き生きとしたドロシーは、理想的でまぶしい。

何がどうこうというわけではないが、こういう王道的な主人公のキャラクターは好感が持てる。それに一緒に旅する仲間たちがそれぞれ欠落を抱えているというところもまた、現実に苦しんでいる人にとってはまるで自分の分身のようで、ストーリーの結末が分かっていても応援したくなる。

 

オズの魔法使の名台詞は何といっても”We're Not in Kansas Anymore”


We're Not in Kansas Anymore - The Wizard of Oz ...

オイラが訳すなら”もう、カンザスとは大違いだわ!!”

ちなみに、映画秘宝のデザイナーである高橋ヨシキさんは”もうカンザスってわけにゃいかねーな!!”と訳していて、どこの貧乏白人だよ!!と思ったりしました。ミーガン・フォックスかよ。

ドロシーが可愛くおどけながら言う台詞は、夢見ることの素晴らしさを表現するには余りある。実際、この台詞ってもう慣用句みたいになっていて(※オズの魔法使は1939年の映画)、旅先で素晴らしい光景に出会ったらとりあえず言っとけ、的な使い方をされている。

とはいえ、対になるのは「お家が一番だわ(There's no place like home.)」。

どんなに素晴らしくても夢の世界はしょせん夢。辛くても苦しくても、最後に帰る場所は現実なのだ。さりげない台詞だけど、これもしっかりした重みのある言葉。

夢の世界で現実と戦う勇気を手に入れてから再び現れるセピア色の現実は、色調こそ同じだがなぜか奇妙に温かい。つらく苦しい時はどうしても俯いて自分の足元ばかりを見てしまいがち。でも、自分を助けてくれる人、自分を温かく迎えてくれる人が絶対にそばにいる。

理想主義だの、寝言だのと揶揄されるかもしれないが、オイラはそれがこの映画のメッセージだと感じた。

 

とにかく全編が楽しくて暖かくて優しさに溢れている。

他人を傷つけることのない優しさに溢れた映画、というのは簡単なようで難しい。

オズの魔法使』の監督であるヴィクター・フレミングが直後に撮った作品は『風と共に去りぬ』。両方とも映画史上に残る傑作中の傑作。

子どもから大人まで楽しめる作品を作るのには並々ならぬ努力と才能が必要なのだ。

”毒にも薬にもならない”なんていうのは、むしろ最上級の褒め言葉。

子どもから大人まで等しく楽しめて、なおかつそれぞれの年代に合わせていろんなことを感じさせてくれる。

こういうクラシックなミュージカル映画は初めて見たけど、予想以上に面白かった。

もっと早く見ておけばよかったな。

 

【追記】 

悪役である西の魔女を見たときに梨木果歩の小説、『西の魔女が死んだ』はこっから取ったんだ、と分かったりして目からウロコ。

大なり小なり、色んなとこに影響を与えているんだな、と今更ながら感心。

なるほど、名作って言われる訳だわ。