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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

ファイブスター物語

ファイブスター物語 [DVD]

月刊ニュータイプに連載されている永野護のマンガを劇場映画化したもの。

原作は魔導大戦(マジェスティック・スタンド)あたりで、あまりの休載期間の長さと遅々として進まないストーリーにキレてしまい(笑)、「もういい!!」と見切りをつけた。

とはいえ、高校時代からだから、かれこれ15年近くは熱心な読者だったわけだ。

もっとも、この劇場映画は89年なのでタイムリーに見た訳ではない。かなり経ってからDVDで観賞した。そのときも大好きな永野デザインのモーターヘッドが動く光景はトリハダものだったが、いま見返してもなお、その興奮は全く変わらない。

 

個人的な事だが、いつしか劇場アニメから遠ざかった。

切っ掛けとなったのは一番最初のエヴァ劇場版。さんざん広げた風呂敷を全く畳むことなく逆ギレ&開き直りというトンデモない作品だったが、今思い出してみると「ああ、あれは時代の仇花だったのだなあ」と妙な感慨にふけってみる。

当時、劇場ポスターのキャッチコピーが「みんな死んでしまえばいいのに」で、その隣に貼られた『もののけ姫』のキャッチコピーは「生きろ」。アニオタの友人たちと爆笑したのを思い出した。

まあ、ここまでは余談。

 

エヴァが画期的だったのは、いわゆる第三舞台などで有名な小劇場ブームの不条理劇をアニメーションに取り入れたこと。実際、TVシリーズは最終話に行くにしたがってどんどんとその要素を強め、挙句の果てがあのラスト。

アニメ雑誌がそろって大炎上していたのを懐かしく思い出す。 

 

で。

 

エヴァが小劇場ブームの不条理劇なら、見事なまでの様式美を展開する新劇芝居なのが、この『ファイブスター物語』。 

とにかくこの映画、徹底的な様式美の世界によって構築されている。

物語は原作の1巻をこれでもかとばかりに忠実に映画化しただけでなく、役者の芝居に関しても非常に大仰。

だが、『ファイブスター物語』自体が非常に大仰な世界観(そうでなかったら、あれほど壮大なスケールの物語がもたないのだ)なので、この演出は大正解だ。

 

監督にやまざきかずお、脚本に遠藤明範、キャラデザは結城信輝

そして製作はチンギスハーンの生まれ変わりである天下の角川春樹

バブル期に作られたアニメのうえに、天下の角川の出資という超ゴージャス仕様。

製作費の額面以上の”カネがかかっている”雰囲気は、昨今の貧乏臭い劇場アニメとは雲泥の差だ。

 

この映画の見どころをまず挙げるとすれば、驚異的なまでの美しい作画。これに尽きる。

とにもかくにも、あの永野護のデザインしたもの――キャラクターが、メカが、”動く”。それだけでもう十分だ。

見れば分かるが、今なら間違いなくCG処理するようなものがセルアニメーションで動いている。それがどのくらいトンデモないことなのかくらい、ド素人のオイラでも良く分かる。

特に、レディオス・ソ-プの乗るナイト・オブ・ゴールド。それがバスター砲を展開する一連の動作は圧巻。

これが手書きのアニメーションで動いている、という舞台裏を想像してもなお、トリハダものだ。一体、何人のアニメーターと作画マンが死んだことだろうか。

 

半面、良くも悪くもストーリーに特筆すべきところはない。

マンガの1巻、そこから全く逸脱しないことを”オリジナリティの欠落”ととるか”安定したファンサービス”ととるかは見る人次第。

ともあれ、『ロミオとジュリエット』や『華麗なるギャツビー』といった作品に通ずる古典的なラブストーリーのフォーマットで話が展開するので、良くも悪くも意外性はない。特にファイブスターのファンなら、最初から最後まで何がどうなって、どのように決着するのか全部把握しているだろうから、余計に新鮮味はない。

最終的にソープがラキシスを連れ出す場面なんて、まんま『卒業』のラストシーンだ。

もっとも、そこから笑顔のラキシスで締めるので正反対の余韻となるのだが。

 

それはそうと、驚異的な美しさのアニメであるのは間違いない。

まあ89年の映画なのでキャラデザに古さを感じないではないが、今の萌えアニメに慣れた目にはこういう頭身の高いキャラクターは逆に新鮮に映る。

個人的に、リトラーやアイシャといったフラれ組の女性たちが可愛く見えるのは、それだけオイラに心境の変化があったからだろう。泣きながら笑って見せるアイシャの気丈さに、ちょっとグッときた。

まあ、以後のアイシャのアバズレっぷりを考えると、”この頃はまだ清純派で売っていたのだなあ”という余計な感想もついてくるが。

 

映像表現の美麗さは最新のジブリと比べても全く遜色ない。

本当に、何度見ても圧巻の作品だ。

 

【追記】

エンディング曲を歌うのは、今や演歌の女王として知られる長山洋子

彼女がアイドルだった、ってことを知ってる人はどのくらいいるのだろう?

でも歌はこの当時から上手かったのだ。


ファイブスター物語/瞳の中のファーラウェイ - YouTube