眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

エコエコアザラク -WIZARD OF DARKNESS-

 本当に菅野美穂が素晴らしかった件。

エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS [DVD]

エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS [DVD]

 

前に取り上げたときは、何もかもをすっとばしいきなり3から見るという暴挙に出たが、そうなってくるとシリーズを順繰りに追っかけたくなるのが人情というもの。

というわけで、エコエコ1を鑑賞だ。

 

この映画の公開は95年。

阪神淡路大震災地下鉄サリン事件オウム真理教による首都大地震の予言など、改めて振り返ると、1999年を間近に控えて非常に終末的な出来事があった年であることが分かる。

そのためオカルティックな色合いや雰囲気が非常に濃く反映されている。

殺人現場を結んだ結果の五芒星なんかはそのものスバリ。……この描写に妙なデジャヴを覚えるのは東北大震災の時も、確かこんなようなデマというか都市伝説をドヤ顔で語ったバカがいたなあ、と思い出す。

オカルトにハマるのはオタク男子にとっては麻疹みたいなものなので、微笑ましく見れた。

むしろ、都市伝説芸人とか言って、イイトシして大して面白くもない雑な都市伝説をドヤ顔で披露してくるほうが心底ガッカリする。

余談だが、その芸人がドヤ顔で「ダンボのサイケデリックなシーンは、アニメーターがLSDをやりながら書いたんですよ(ドヤァ!!)」などとほざいたが、「そうですか」としか言いようがない。ネタに強烈さが足りないのだ。

だって、デニス・ホッパーという俳優は67年の『白昼の幻想』から86年の『ブルーベルベット』までの間、シラフでカメラの前に立ったことがなく、大麻からコカイン、LDSなどなど、ありとあらゆる薬物をキメまくっていたのは誰もが知るところだからだ。*1夕張映画祭で来日した際、北海道のパウダースノーを勝新太郎と観賞して言ったとされるのは「あれがコカインだったら一生かかっても吸いきれないぜ」。

ホッパー親父の破天荒さに比べりゃ、そんな都市伝説小さい小さい。LSDちょっとラリッたぐらい、ハリウッドじゃ普通だから。

 

まあ、そんなことはどうでもいい。

 

今日的な視点で見て最も驚愕するのは、何といっても主演:吉野公佳、助演:菅野美穂というキャスティング。言っておくが、逆ではない。本当にこのキャスティングだ。

いまでは完全に落ちぶれに落ちぶれた感のある吉野公佳だが、当時は、後に堺雅人と結婚することになる人気女優・菅野美穂よりも格が上だったのだ。

非常に重要な事だから、もう一度書いておく。

菅野美穂よりも吉野公佳の方が格上だった時代があったのだ!! 

 

まあ、二人とも本作がデビュー作といってよいので非常に初々しい。

菅野美穂は今も目がキラキラしているが、この当時の初々しさやキラキラ具合は実に素晴らしい。オカルト映画は一面でアイドル映画でもあるので、こういうのは一観客として嬉しかったりする。本当に、惚れ惚れするくらいに菅野美穂がフレッシュで初々しい。

 

キャスティングに限らず、”今日的な視点で見ると~”というのがこの映画のキーワード。

スタッフは、

監督:佐藤嗣麻­子(山崎貴と結婚。『スペース・バトルシップヤマト』の脚本を担当)

音楽:片倉三起也ALI Project

VFX山崎貴(監督作に『スペース・バトルシップヤマト』など)

という非常にコメントに困るメンツ堂々たる布陣。

山崎貴VFXは見事だし、音楽も効果的だ。監督は……がんばってるね、とだけ言っておきたい。

正直に言わせてもらうと、一番足を引っ張っているのは監督の演出力だ。

サム・ライミの『死霊のはらわた』と比較すると判りやすいが、ショック描写の一撃一撃が甘いのだ。もっと極端なくらいのショック演出ができたはずなのに、なぜか及び腰。予算という面で見れば『死霊のはらわた』とどっこいどっこい、あるいは『エコエコ』の方が上のはずだ。VFXが使えるという意味でも『死霊のはらわた』よりも有利なはずなのに……。

特に後半の閉じ込められた校舎内でのシークエンスは、まんま『死霊のはらわた』。

でもイマイチ煮え切らないのは、監督がホラーに対する愛情や意気込みが薄いせいだろう。もっと凄惨なゴアシーンにできたはずなのに必要以上に及び腰。階段からコケたくらいで血を吐いて死なれてもねえ……。あの高さで死ぬかね?

北村龍平監督が言うところの「気合が足りない」というヤツだ。

気合が足りないまま、形だけ『死霊のはらわた』を真似されてもねえ……。

 

そのかわり大幅に増量されたのは学園青春要素と恋愛要素。

っていうか、『死霊のはらわた』に高校生の甘酸っぱい恋愛模様を入れて何をする気だったのだろう?イイとか悪いとかではなく、その点には単純に興味がある。

それはそれで革命的な作品の予感がするからだ。

めっちゃ血がドバドバ出る『トワイライト』みたいなものが完成するかもしれない。

……なんかそれ非常に楽しみだぞ!!

トワイライト 初恋 [DVD]

トワイライト 初恋 [DVD]

 

 

アクションシーンやオカルト描写はだいぶ足りない。

正直に言わせてもらうと、一番最初のゴア描写が最高潮で、あとは全く大したことがない。場面によっては血がブーブーでるが、純然たるホラー映画という観点からすると、もうちょっと工夫が欲しかった。

特に、ミサとある人物とのアクションシーンの気の抜け具合は茫然とする。

本来的には緊張感のあるアクションシーンに仕上げねばならないのだが、演出と役者の演技が悪い意味での相乗効果になっており、全く緊張感も無ければ魅力もない。反抗期の母娘のケンカの方が100倍暴力的だ。

ホントにこの監督の演出力の無さはかなり残念な領域にある。

 

だが、大したことのない作品か?というとそんなことはない。

確かにいろんな点で物足りない映画ではあるのだが、ラストに至るある一点で一気にひっくり返す強力な展開があるので、それだけで十分!!

山崎貴&佐藤嗣麻­子夫妻の最高傑作と言っていいだろう。他の作品は総じてゴミじゃねえか、とか核心をつくようなことを言ってはいけないぞ。

それに、菅野美穂の演技の神がかり具合が本当に素晴らしく、全体の3/4を占めるひどく退屈な展開もこのためだったら余裕で我慢できる。

VFXのやり過ぎ感も妙にマッチしていて言うことなしだ!!

そこに至るまでの演出が本当にダメダメ&ダルいの一言なのだが、だからこそラストシーンの破壊力は本当に素晴らしい。たとえラッキーパンチでも、これなら納得&大満足!!

 

これは単純にオイラの嗜好の問題なのだが、無理をしないで手堅くまとめられた平均的によい映画よりは、良くも悪くもぶっ飛んだ個性のある作品の方が見ていて楽しめる。

そういう意味では、当初思っていたののナナメ上を行く予想外な展開での裏切りは、本当に予想以上の満足感が味わえた。

何も期待しないで見ていたが、これは本当に面白い。

もう一度見たくなる思わぬ儲けもの。

いやいや、ホントに面白かった。

 

単純に菅野美穂目当てで見ても十分楽しめると思う。

 

【追記】

タイトルに、”-WIZARD OF DARKNESS-”とあるが、WIZARDは男性名詞だ。

正しくはMAGUS(マグス 女の魔術師)だと思うのだが、その単語自体の知名度が非常に低いので仕方ない。

*1:コッポラの『地獄の黙示録』のメイキングでバリバリにラリったホッパーが見られる。台詞が入っていない上にラリって話が通じないホッパーに、コッポラは頭を抱えた。