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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

ゴジラ【デジタルリマスター版】

テレビで録画したのを見る。

ハリウッド版のゴジラが上映されるのに合わせてのBSゴジラ祭(とオイラが思っている)の第1弾。言うまでもないが、『ゴジラ』といえば製作・円谷英二、監督・本多猪四郎の黄金タッグによって作られた日本映画屈指の傑作だ。

パシフィック・リム』の監督であるギレルモ・デルトロも、少年時代にこの作品に出会ったことで道を踏み外した映画の世界へと進んでいったのは有名な話。他にもさまざまな映画人がこの作品に衝撃を受けたことだろう。

かえすがえす、この映画の素晴らしさでありすさまじさを感じないではいられない。

本作の公開は54年。終戦から10年も経っていない、というのは非常に重要な意味合いを持つ。なぜなら、ゴジラが戦争という不条理を象徴している存在だからだ。

水爆実験によって誕生し、放射能を吐く、というこの2点からも、日本が世界で唯一の被爆国であることを映画というかたちで表現している。

ゴジラが東京の町を破壊していく様は、まさに戦争中の光景そのもの。

大破壊と逃げ惑う人々、そして無力な軍隊という構図もあの戦争と同じだ。

特にここ最近では阪神大震災や9.11同時多発テロ東日本大震災などがあったせいでより一層、こういった無慈悲かつ不条理で抗うことのできない災厄というものが身近に感じられる。そういう意味では、当時の戦争の傷跡も癒え切らない時期に見た観客たちの感じたところと、こうして今見ている我々との心境や感情は限りなく近いものになっているような気がする。

海外のこういったジャンルの映画と違って、『ゴジラ』に登場する普通の人々はただただ逃げまどい、何かに対して祈るばかりで、自らその不条理に抗おうとはしない。

もちろん、これは日本人が悪いという意味合いではない。

むしろ、圧倒的な不条理(それも暴力性を伴った不条理)を前にして無力を悟ったとき、人間は逃げ惑い祈ることしかできないのだ。

アメリカ映画だと『インディペンデンスデイ』や『アベンジャーズ』がそういったものに立ち向かう話ではあったが、現実のアメリカはどうだったか?

9.11の世界貿易センタービルが崩壊したとき、人々はただただ逃げ惑い、茫然と神に祈ることしかできなかったはずだ。

ゴジラ』が国を問わず受け入れられるのは、きっと、そういった人間の本質的部分に訴えかけるところがあるからだろう。

圧倒的な災厄はどこにでも、そしていつでも起こりうる。それが戦争であるのか、自然災害であるのか分からないが、それらに見舞われたとき、逃げ回り茫然と祈ることだけではなく、それに立ち向かうひとつの指針がもしかしたらこの映画にはあるのかもしれない。

ゴジラと命運を共にした芹沢博士の姿を思い出しながら、そんな風に考えた。

 

……と真面目な事を書いては見たが、結局のところ怪獣がミニチュアの街を徹底的に破壊し、人々が阿鼻叫喚の地獄絵図の中を逃げ惑うという絵面は、非常に見ていて楽しいものだ。

これが怪獣映画の醍醐味ってモンだぜい!!

怪獣映画では”どこ”を大破壊するのか?というのは非常に重要な問題だ。

なぜなら怪獣映画において破壊される建物は時代のトレンドを反映したものでなければならないからだ。

銀座という”いけ好かない金持ちどもの町”を徹底的にブチ壊してこそ、「ざまあ見やがれブルジョワどもが!!死ね!!」と庶民は溜飲を下げられるのだ。ちなみに国会議事堂がちょくちょく破壊されるのも「このクソ政治家ども!!皆殺しじゃ!!」という庶民の気持ちを反映したものなので、ガンガン破壊すればいいと思います。

個人的なことだが、スカイツリーが完成したときにあのシルエットを見て「へし折りたい」と素で思った。というか、絶対にスカイツリーを破壊する怪獣映画を撮る人間がいると思ったのになあ。さらに言えば、、六本木ヒルズの外装がガラス張りなのは、ぶっ壊した時にガラスが弾けて見栄えがするからガラス張りなんだよね?あの建物がテレビに映るたび、「ああ、オイラは何で怪獣映画の監督じゃないんだろう。オイラが監督なら、絶対あの建物を派手にぶっ壊すのになあ」と思います。

ちなみに、これが”怪獣脳”。

パシフィック・リム』を見た後などに発症しやすいので、ダンナや彼氏がこういう状態に陥った場合は、速やかにウディ・アレンの映画などを見せて治療しましょう。

ほっとくと、色々な意味で手遅れになります。

 

それはいいとして。

 

傑作であることは疑いようのない事実なのだが、さすがに60年も経つと、「ん?」という点がないわけではない。

例えば、大戸島にゴジラが出現し、その足跡を見下ろすシーン。

センターが志村喬で両脇に日本刀を持った漁師のおっちゃんたちが並ぶという構図は、どっから見ても『七人の侍』(笑)。

また、茶の間のシーンのアングルは完全に小津安二郎(笑)「なぜここに笠智衆原節子がいないんだろう?」と思ってしまう。

ワザとやってたとしても、ニヤリとくるファンサービスだ。

 

オイラが一番ワクワクするのは、何といっても平田昭彦

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アイパッチといい、端正な顔立ちといい、特撮映画を代表する名優中の名優。この人と天本英世*1潮健児*2の3人は特撮界のスーパースターだ。

本作で平田昭彦演じる芹沢博士がゴジラを倒すのだが、考えてみればこの後、平田昭彦は『ウルトラマン』にも出演している。

ゴジラをオキシジェン・デストロイヤーで倒し、ゼットンペンシルロケットで倒し、と最強の怪獣を2匹も倒しているので、『平田昭彦最強説』というのを友達相手に唱えてみたところ、非常に残念ものを見るような顔をされました。……振ったオイラも悪いが、もうちょっと食いついてくれてもバチは当んないと思うよ。

 

何はともあれ、全く古びない傑作映画。

怪獣と特撮が日本のお家芸であった栄光の作品。

余談だが、夏という季節はなぜこんなに怪獣映画と相性がいいのだろう?

 

【追記】

平田昭彦の夫人は女優の久我美子。まさに美男美女夫婦だ。

(※右が久我美子で、左が岡田英次)

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彼女の代表作といえば、ガラス越しのキスシーンで有名な『また逢う日まで』。

そんな彼女が唯一出演した怪獣映画は『ゴジラVSビオランテ』。

ちなみに役柄は官房長官平田昭彦の願いを受けての出演だったとか。

*1:代表作は『仮面ライダー』の死神博士

*2:代表作は『仮面ライダー』の地獄大使