眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

クレイドル・オブ・フィアー

Cradle of Fear [DVD] [Import]

Cradle of Fear [DVD] [Import]

 

 今回取り上げるのは、『クレイドル・オブ・フィアー』というホラー映画。

「知らん」という人がほとんどだろう。

なぜならこの映画、日本では公開されておらず、DVDも発売されていない。輸入盤でやっとこさ見ることが出来る。

多くのホラー映画ファンは知らんだろうが、これはむしろメタルファン(特にブラックメタルのファン)に対して猛烈アピールする映画なのだ。

 

つまり、オイラにジャストミートな映画というわけ。

そんなこんなで、どマイナーにも程があるホラー映画『クレイドル・オブ・フィアー』を取り上げてみる。

 

本作のキモは、ダニ・フィルス。

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イギリス・サフォーク州出身のシンフォニック・ブラックメタルバンド『クレイドル・オブ・フィルス』のボーカリスト。その彼が出演しているのが、最大の話題ポイント。

この彼が非常に面白い経歴の持ち主なので、個人的な忘備録として書いておくことにする。

ダニ・フィルスがエンタメに足を踏み入れた一番最初のとっかかりは、音楽ではなく演劇。イギリスのとある演劇学校で学んでいたのだが、いわゆる『スタニスラフスキー理論』*1になじむことが出来ず、ドロップアウト。しかし、そこで学んだ演劇的アプローチを当時はまだアンダーグラウンドだったブラックメタルの世界に持ち込み、クレイドル・オブ・フィルスを世界一成功したブラックメタルバンドの地位に持ち上げた。ちなみに、彼が唯一のオリジナルメンバーで、実質的なリーダーだ。

元々演技者なので(この辺はライブパフォーマンスに顕著)、映画のオファーにも気軽にOKしたとのこと。彼曰く「とても面白かったよ」だとか。まあ、出演と共同脚本だからねえ。そりゃ楽しいだろう。……ちょっと、羨ましい。

 

ちなみに、この映画は大手メジャー製作会社によるものではなく、自主製作映画だ。自主製作映画というと、決まり文句のように”低予算”とつくのが恒例だが、正直この映画がどの程度の予算規模なのかはよくわからない。

低予算のような気もするが、それにしては非常に絵作りが凝っていて、自主製作映画にありがちな貧乏臭さをあまり感じない。何より、ゴア&スプラッターな人体破壊描写にかなり気合が入っていて、CGを多用しない特殊メイク的な方法は今じゃこっちの方がお金がかかるような気もしなくはない。

アホな感想なのは重々承知の上で書くが、とにかくこの映画は全編にわたって「クレイドル・オブ・フィルスのPVっぽい」。

画面の質感や、構成、カット割り、演出や音楽に至るまで、とにかくクレイドル・オブ・フィルスのPVにしか見えない。まさに2時間の長編PVだ。

例えば、コレとか、


Cradle of filth - Born in a burial gown [HD] - YouTube

 

コレとかが近い。


Cradle Of Filth - Scorched Earth Erotica(Very Nasty ...

 

何はともあれ、自主製作映画なので映倫的なものを通していないのだろう。

景気よく血しぶきが飛び散り、人体が破壊されるだけでなく、画面効果としてかなり強めのフリッカー*2を使ってみたりとやりたい放題だ。特にフリッカーについては、下手したらひきつけを起こしそうなくらいに強い。子どもには見せられないぞ。*3

さらに言えば、演出面を支配する暴力性と残虐性は見事の一言だ。

下劣で残忍で暴力的というこのテの映画に最も必要とされるもの”だけ”を最大限ギリギリまで注入した感があり、こういうところも自主映画の強みだなあ、などと呑気に思ったりする。

ストーリー的には精神病院の閉鎖病棟に収監されている猟奇殺人犯がある儀式を行うと、実態を持った生霊のダニ・フィルスが出現して人間を殺しまくるオカルトホラー、という「もう1万回ぐらい聞いたよ、その話」という何の新鮮味もない内容だが、殺人方法が手で引きちぎる、鈍器で撲殺する、刃物で刺殺する、など非常に見ていて痛々しいこともあり、夏のじめつく熱さを全く吹き飛ばさないジメジメした陰惨さに満ち溢れていて、とても心地よい。一周まわって素晴らしいというヤツだ。

 

ただ、自主映画なのでメジャー並みのクオリティを期待すると、いろいろ厳しい。

このテの映画の常とう手段として、画面内の粗が見えないように夜のシーンが多用されるのだが、*4とにかく夜のシーンが多く、画面全体が暗くて見にくいという致命的な欠点がある。もうちょっと照明を当ててもバチは当たらない気がする。

加えて、ストーリー自体が非常にありきたりな事もあり、暴力シーンやスプラッターシーン以外に見るべきところがない。まあ、その暴力&スプラッターシーンもSEが余りに軽いので、音だけ聞くとコントというかドツキ漫才にしか聞こえない。……ここはホント何とかしてもらいたかった。とにかくミスマッチすぎる。

ホラー映画の猟奇場面の鉄板、”猫殺し”が出てくるが、どう見ても猫がヌイグルミ(笑)。にもかかわらずSEばかりがニャンニャン叫ぶので、思わず笑う。いくら低予算といってもさあ……(笑)。

 

「どマイナーな映画だからって、話を盛ってんだろ?」

と思うなら、輸入盤DVDを購入して確かめてほしい。

ホントにこういう感じのぬいぐるみ↓

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をナイフでメッタ刺しにして内臓を取り出すのだが、どっからどう見てもぬいぐるみ(笑)。しかも、メッタ刺しにしているのに全く血で汚れていない。というか、ホントに刺さってんだろうか?という風にも見える。なので、あのぬいぐるみはきっとダニの私物なのだろうという結論に至った。まあ、メタルのミュージシャンは猫好き多いからね。*5

 

何より問題は、この映画は2時間もありやがるのだ。

オイラの尊敬するデザイナーの高橋ヨシキさん曰く、

「どんな映画も90分ぐらいがちょうどいい」

正直、この映画は長すぎる。

どう考えても2時間を超える内容ではないにもかかわらず、色んな要素を詰め込んで長尺にしようとしているため、悪い意味で物語が訳の分からない方向へ暴走している。

 

色々とグズグズ書いたが、主演(というかストーリー上の狂言回し)のゴスゴスのお姉ちゃんが近年まれにみるほど景気よくスパーンと裸になってくれるのは最高だ。スレンダーな体型でゴスで巨乳でビッチって、まるで盆暮れ正月が一緒にやってきたようにウハウハだ

本作は2001年の映画だが、こういう景気のいいお色気シーンを目の当たりにすると「昨今の日本の景気も上向いているのだなぁ」と感じないではない。

 

実のことを言うと、前々から気になっていた映画ではあったので、デキはアレだが「見れて良かった」という、なんだかどうでもいい感想とともに心が安らいだ。

まあ、デキはアレなんだけどね。

*1:メソッド演技ともいう。その役柄の全てを分析し、徹底して役柄になり切る演技法ロバート・デニーロダニエル・デイ・ルイスなどが有名。

*2:光を点滅させるちらつき効果

*3:確実に18禁な映画です。

*4:暗いと細部の粗が見えにくい、という現実的な理由から。ホラーの場合は夜の場面での惨劇に必然性があることから、実利を伴った方法として多用される。

*5:スリップノットの元ドラマー、ジョーイ・ジョーディソンはインタビュアーと「どっちの飼っている猫が一番かわいいか?」について迫真の議論を繰り広げた。ちなみに彼が飼っているのはモーキーという名前の黒猫。スマホの待ち受けは勿論モーキーだ。


Joey Jordison Meets A Crazy Cat - YouTube