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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

安吾巷談/坂口安吾

読書【エッセイ】
安吾巷談 (角川文庫)

安吾巷談 (角川文庫)

 

個人的には『堕落論』よりも『安吾巷談』のほうが好きだ。なぜなら、こっちの方がはるかに言いたい放題(笑)。同じような事を今やったら、ものすごい勢いで炎上しそう。そのくらいにやりたい放題&書きたい放題。

ヒロポンの静脈注射は効き具合が悪いからダメ。睡眠薬に限る。”

睡眠薬は乱用してもウイスキーと一緒に呑んでおけば、酒で分解されるから中毒しない。”

チャゲアス飛鳥涼が薬物で逮捕されたこのご時世、「ちょっと待て」的な安吾の放言っぷりはいっそ清々しい。”酒で分解されるから中毒しない。”って言っておきながら、アナタ、アドルムの乱用でバリバリの睡眠薬中毒になったやん(笑)

 

それはさておき。

ちょっといい言葉があったので、引用しておく。

セッカチな理想主義が、何より害毒を流すのである。国家百年の大系などというものを仮定して、ムリなことをやるのがマチガイのもとだ。人のやる分まで、セッカチにやろうというのが、もっての外で、自分のことを一年ずつやればタクサンだ。

銘々がその職域で、少しでも人の役に立つことをしてあげたいと心がけていれば、マルクス・レーニン主義の実践などより、どれくらい立派だか知れやしない。人の能は仕方がないから、心がけても、人になんにもしてあげられなくても、かまわんのさ。

そしてその次に、自分だけのたのしい生活を、人の邪魔にならないように、最もたのしむことを産まれてきたための日課だと心得ることだ。

安吾の随筆の好きなところは、とにかくストレートなところ。

上記の引用部分も、みんな大なり小なり思っていることだろう。でも、口には出さない。青臭いし、理想論だし、現実はそんなに甘くない、こんな風に思うから誰も口にしない。

でも、安吾は書く。

愚直に、自分の思ったこと感じたことを、思ったまま、感じたまま、書く。

無頼派でありながらも、とにかく彼は生き方がまっすぐなのだ。

そもそも、なぜ彼が覚せい剤睡眠薬に中毒になるほどのめり込んだのか?

理由は、このまっすぐさにある。

原稿の依頼を片っ端から受け、夜昼なく書くためには眠ってはいけない。だから、覚せい剤を使う。起きてる間中書き続け、依頼された原稿を仕上げ終わったら、今度は眠りたい。どこまでも深く深く眠るために睡眠薬を使う。

「だったら依頼を加減すればいいんじゃない?」と考えるのは凡人の発想だ。

安吾のようにまっすぐな人は「断ると相手に申し訳ない。自分が引き受けさえすれば丸く収まるのなら、引き受けるべきだ」と考える。

不器用な生き方、と笑う人は笑えばいい。ちなみに、オイラは安吾のこの生き方は嗤えない。なぜなら、自分もそういう風に考えているからだ。

 

感傷的な話はこれくらい。

とにかくこの『安吾巷談』には抱腹絶倒のオモシロエッセイが収録されている。

タイトルは『今日われ競輪す』。

競輪にハマるものの、まったく当たらず「八百長じゃねえかコノヤロウ」とキレた坂口安吾が、20日以上もかけて競輪の八百長を証明しようとする。まあ、これが面白いのなんのって(笑)。完全に頭のおかしい人のイチャモンだ。(笑)

一体、ドコを目指しているんだろう?

 

この本には名エッセイ『湯の町エレジー』も収録。

ふとした拍子に、坂口安吾の本は強烈に読みたくなる。