眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

殺し屋1

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三池崇史監督による、山本英夫のマンガの実写化。

 

ちなみに、三池崇史監督といえば、『ヤッターマン』や、『忍たま乱太郎』などを手掛けており、 他に『十三人の刺客』のリメイクで映画賞を総なめにするなど、日本を代表する実力派映画監督として知られている。

 

そんな三池監督の作品の中で、オイラが最も好きなのがこの映画。

実に三池監督らしく、俗悪で下劣で暴力的なうえに悪趣味感満載。

例えて言うなら、『ホステル』と『キル・ビル』と『仁義なき戦い』と『悪魔のいけにえ』と『ヘルレイザー』を全部足したような、常軌を逸した残虐かつ暴力的なホラー映画だ。

『HOME 愛しの座敷わらし』や『小さなおうち』といった心温まるホームドラマ、などという虚飾に塗れた作品よりも、価値という意味では本作の方が圧倒的に上。

少なくとも、オイラは本気でそう思っている。

 

本作の特徴のひとつとして挙げられるのは、いわゆる世間一般でいうところの”まともな人間”がひとりも出てこないところ。

とにかく全員が全員、(程度の差こそあれ)変態かつ異常者なのだ。

このくらい人間の醜悪な内面を肯定する映画は珍しい。

他作品でいちばん近いのは、ミヒャエル・ハネケ監督の『ファニーゲーム』だろう。

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ファニーゲーム』は哲学的というか芸術的な表現で理不尽な暴力の魅力を描いているが、『殺し屋1』は全く逆。理不尽な暴力を下劣な娯楽として描いている。

そこが最大の魅力。

『時計仕掛けのオレンジ』に熱狂した人ならわかるが、他人に対して無慈悲にふるう暴力は楽しいのだ。

 

その象徴となるのは、浅野忠信演じる垣原雅雄。

この垣原が非常に素晴らしい。

浅野忠信が演じることで、原作よりも年齢が下がりファッショナブルになったのは、イイ点か悪い点かはさておく。

とにかく、自然体でさまざまな残虐行為を行う浅野忠信が実に魅力的だ。

どのくらい自然体かというと台詞をトチったNGテイクすら、「自然体だからOK」とばかりに採用されるくらいに自然体。……毎回思うのだが、三池監督のOK基準がよく分からない。

正直、浅野忠信はあまり好きな俳優ではないのだが、この映画に関しては別腹。

原作だとあからさまに非現実的なキャラクターなのだが、映画だと妙にリアリティがあってワクワクしてくる。さすがに実写化するにあたって、「こりゃムリだろ」っていうシーンは悉くカットされているのはちょっと残念だなあ、と思うけれども、その反面「よく演じてくれたなあ」などとも思ったりする。

 

とにかく、全編狂った暴力シーンのオンパレード。

海外の映画祭で公開された時、思いっきり大問題になったのも頷ける。

普通やらない(社会的コードとしてやってはいけない)、女性に対する過度なDVシーンや、子どもに対するショックシーンなど、三池イズムの前にタブーってないんだな、と改めて感心する。

忍たま乱太郎』における「何もそこまでやらなくても」という過剰なコスプレっぷりもそうだったが、この「何もそこまで」という過剰さが三池作品の魅力の一部分。

同時に、松尾スズキ塚本晋也に対する冗談とした思えないCGの使い方など、三池イズムがさく裂した悪ふざけは非常に楽しい限り。特に塚本晋也に対しては、本当に冗談抜きで頭の悪い中学生のような使い方。

自由、ってホントにいいもんだな、と思わずにはいられない。

 

意外だったのが、大森南朋

演技派俳優なのは昔からだから、非常に原作のイチに近い。っていうか、殆ど3DCGのようですらある。若干老け気味にも思うが、目と眉の感じがイチだ。

演技に関しては全く心配なく見ていたけど、まさか、こんなに体が動く人だとは思わなかった。意外な儲けものというのはこういうのを言うんだろう。

『ハゲタカ』以来、シリアスな役どころでの演技力を評価されているが、オイラとしてはもういちど本作のようなアクション映画に出てほしい。

岡田准一程度の輩に、アクション俳優面されたくないのでなおさらだ。

 

余談だが、大森南朋椎名桔平のように目の奥に陰があって、そこがとても色っぽく感じる。それが世間に疲れたような雰囲気と相まって、絶対この人若い女にもてるんだろうな、と思ってしまう。

 

それはいいとして。

 

日本映画が誇るイジメられキャラである寺島進

彼は今回、これでもかと言わんばかりのイジメられ方をしており、ほとんどそれは名人芸の域。やはり彼にはこういう役が良く似合う。

今回彼が遭遇するイジメは天ぷら。

煮えたぎる天ぷら油でこんがりと揚げられるという責苦に遭っている。

なかなかに特殊なプレイだ。

 

最後に、待っている一番の見どころ。

それはエンドロールだ。

オイラが知る限り、世界一見づらいエンドロールは必見。

 

とにかく、最初から最後まで三池崇史イズムの悪ふざけのさく裂した、とてもイイ映画だった。

暴力的な娯楽としての悪ふざけという意味では『時計仕掛けのオレンジ』のようなのだが、あくまでもこちらは素の暴力というか直接的な欲望を満たすための暴力が描かれている。

原作にもある下衆で俗悪というテイストを魅力と感じるか不快と感じるかで、本作の評価も変わってくると思う。

 

ちなみに、映画評論家の町山智浩さんは本作を鑑賞して「気が狂うかと思った」と評している。