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積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

エンジェルウォーズ

エンジェル ウォーズ [DVD]

エンジェル ウォーズ [DVD]

 

『300』『ウォッチメン』『ドーン・オブ・ザ・デッド』などを手掛けた、鬼才ザック・スナイダーによるSFファンタジーバトルアクション。

継父の企みで精神病院に収監された少女の脱出劇と、彼女の想像世界でのバトルアクションを同時並行的に描いた驚愕のビジュアルが見どころだ!!

 

と、こうやってほめておけば後のことが随分書きやすくなったぞ。

 

確かに本作はSFファンタジーバトルアクションなのだが、ミニスカートのセーラー服美少女戦士がマシンガンや拳銃や日本刀を振り回し、ナチっぽいゾンビ兵や巨大サムライロボット、邪悪なドラゴンと死闘を繰り広げる、という内容をどう思うだろうか?

「お前、ちょっといい加減にしろ」というのが世間の一般的な反応というものだろう。

さすがのオイラも「ちょっと待て」と思った。

ザック・スナイダーといえば、最初にも書いたが『300』『ウォッチメン』『ドーン・オブ・ザ・デッド』を手がけた鬼才だが、それらはすべて原作があるか元の作品があるかである。そこにきて、自身のオリジナル作品がこの『エンジェルウォーズ』。

「ミニスカ美少女戦士が戦うヤツが作りてえ!!」というちょっとどうかしているどころではないドン引き具合の企画に、ホイホイ大金が投入されたのかと思うと、世の中金があるところにはあるのだ。根源的な表現作品に心打たれた人間がいるからこそ、こうして作品が世に出たのである。世の中には、心の清い人がいるんですよ!!

 

とにかくこの映画、アニメやゲームやプラモっぽい。っていうか酸っぱい臭いのオタクマインドが濃厚に注入されている。デルトロ監督は微笑ましいが、ザック監督の場合は若干シャレにならない気がするのは気のせいだろうか?*1

具体的には、『AKIRA』『マシーネン・クリーガー』『サクラ大戦』『ブラッド・ザ・ラストバンパイア』など。

加えて想像の中でのバトルは、ミッション系アクションゲームそのもの。

例えば『三國無双』『戦国BASARA』『ヘイロー』『コール・オブ・デューティー』『メタルギア・ソリッド』……。

いずれにせよ、非常によろしくないラインナップだ(笑)

この時点でビンビンと伝わると思うが、実際に最初のバトルシーンとかを見てほしい。本当に「大丈夫なのか?この映画?」と困惑するぞ(笑)

とはいいながらも、凄まじいまでの圧倒的なビジュアルと恐るべき戦闘シーンは見ていて非常にアガる。まだやってはいないが、コントローラー片手に観賞すると、驚くほどの臨場感を味わえるはずだ。まさにバーチャルリアリティ

 

もはや作家性を完全に飛び越えた、ザック・スナイダーの癖的な部分がダダ漏れの作品なので、安易に「こいつは最高の映画だぜイヤッホゥ!!」とか書きにくい。まあ、気持ちは分かるが、さすがのオイラもちょっと引いた。ミニスカのベイビードールちゃんがスカートの下にスパッツを履いてやがり「ザック死ね」と思った

 

”現実の世界で敗北するくらいなら、想像の世界で勝利すればいいじゃない”という発想を元に、精神病院からの脱出ミッションが行われるのだが、現実に行われるミッションを映すことなく、主人公のベイビードールの想像の中でのSFファンタジーバトルに代替されるというトリッキーな構造。

「現実世界では主役ではないけれど、自分自身の世界では自分自身こそが主役だ」というのはゴア・バービンスキー監督*2の3Dアニメ映画『ランゴ』の核となるテーマ。本作もそこに立脚している。

んでもって、想像の世界で戦えばいいじゃない、というところでピンと来た人もいるだろうから、早速書いておく。

ネタバレギリギリだが、この『エンジェルウォーズ』に最も影響を与えている作品は、テリー・ギリアム監督の『未来世紀ブラジル』だ。一応ネタバレなので、深くは追及しない。合わせて観賞するのをお勧めしたい。

 

かなりフェティッシュな映画なので、そこが好みの分かれ目という気がするし、何より現実のミッションが想像の中でのミッションに置き換わるという演出が都合4回ほど続くので、その構成のワンパターンぶりに飽きが来るのも否めない。

でも、ザック・スナイダー得意のケレン味たっぷりのビジュアルは最高だ。

もう完全にヒロインアクション映画。そこはとても楽しめた。

 

ただ”YES★大味バカ映画”かと思っていると、二重三重に虚構と現実とが交錯するメタ展開に発展し、最終的には全く予想しないところに着地する。

良くも悪くも全くスッキリしないラストシーンはトンデモないが、これが原題の『Sucker Punch』*3につながるのだ。『エンジェルウォーズ』という身もフタもないタイトルのせいで台無しだ。

ミニスカ女子高生美少女戦士が戦う萌え萌えアクション映画かと思いきや、「人間はどのように生き、どのように死ぬべきか?」「人生とは一体何か?」について考察した、極めて哲学的な映画。

 

ビジュアルイメージでだいぶ損をしている気がするが、主題がとても重たいのでこのくらいの相反する要素でもなければ見てられない。

能天気なアクション映画かと思うと、とっても重い一撃を喰らわされるので要注意。

まさに 『Sucker Punch』だ。

 

【追記】

『エンジェルウォーズ』は非常に賛否が分かれる結果となり、興行収入で苦戦。

その次に彼が撮ったのがスーパーマンのリブート『マン・オブ・スティール』。よりにもよって製作があのクリストファー・ノーランだったため、非常に陰鬱で苦悩に満ちた映画となり、スーパーマンが本来持っていた能天気なアゲ感ゼロ。案の定、これも賛否が分かれて興行収入で苦戦し、ファンから悪評をぶつけられた。

そして、満を持して来年公開されるのが『バットマンVSスーパーマン』。ここにもクリストファー・ノーランが参加しているため、間違いなくバットマンもスーパーマンも「何故戦うのだろう?」と苦悩する非常に暗い映画になること請け合いだ。

いい加減、『300』みたいなアドレナリンが噴出する筋肉バカ映画の世界に早く帰ってきてほしい。

*1:ハリウッドでもっともシャレにならない監督はポール・W・S・アンダーソン監督。三度の飯よりアニメとマンガとゲームが大スキなダメ監督で、嫁であるミラ・ジョヴォビッチの稼ぎをダメ映画に突っ込む非常に素晴らしい男だ。「どうしてもやりたい企画があるから」とバイオハザード2の監督を降板したが、その映画が『エイリアンVSプレデター』。一部で「アイツは男の中の男だ。まったくブレてねえ」と尊敬された。

*2:バービンスキー監督といえば『パイレーツ・オブ・カリビアン』をはじめとして、プロデューサーの言われるままに作品を作る自己主張の乏しい監督だが、『ランゴ』では自ら企画製作監督脚本を担当し、見事オスカーのアニメ部門をゲットした。

*3:『不意打ち』『予期せぬ一撃』という意味