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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

アゲイン 男たちの挽歌3

アゲイン 男たちの挽歌3 [DVD]

アゲイン 男たちの挽歌3 [DVD]

 

いわゆる『男たちの挽歌』シリーズの3作目。

これのカルチュアパブリッシャー版のDVDを手に入れたことで、シリーズすべてをコンプリート!(^^)!

ちなみに、なんで旧作のDVDで集めているのかというと、吹き替えが収録されているだけではなく、『男たちの挽歌』と『男たちの挽歌2』に収録されているチョウ・ユンファジョン・ウーへのインタビューが拝めるから。

加えて、旧版は日本語吹き替えの台本のデキが素晴らしい。

再販&ブルーレイの字幕は目も当てられないくらいにヒドいうえに、5.1サラウンドなどの高音質にしようとしたのが裏目に出て、銃撃戦のSEが潰れてしまいペラペラ。

なので、このブログを見てる人で「古いDVDを捨てようかな?それとも売ろうかな?」と考えている人は、絶対にその考えを改めた方がいい。ハッキリ言って、カルチュアパブリッシャー版は画質はさておき、トータルの完成度ではブルーレイの非ではないからだ。……というわけで、「コンプリートしたぜ!!やったー」という喜びとともに本作を鑑賞した次第。

 

これでもかと言わんばかりの、男性的ヒロイズムの極致とでも言うべき『男たちの挽歌』シリーズにあって、女性的ヒロイズムが主軸にあるこの『男たちの挽歌3』は完全な異色作。そのせいか、ファンの間では駄作として名高い逸品だ。

オイラも昔、初見時に「なんだこの映画?!」と非常にガッカリした。

まあ、ストーリーとかすっ飛ばして、大変に男臭い壮絶な大銃撃戦が20分近く展開する『男たちの挽歌2』の後、コレを見せられる身にもなって欲しい。なんだこの映画?!」と非常にガッカリするのは、むしろ自然な感想だろう。

ファンにとって最大の落胆ポイントは、チョウ・ユンファ演じるマークが、本作ではとんでもなく弱いところ&男女の三角関係を巡るストーリーという部分。

男たちの挽歌』を愛するボンクラ紳士ファンにとって、一番見たくないものによって作品が作られているとなれば、そりゃ不人気にもなるだろう。

 

 

男優を必要以上にカッコよく撮ることのできるジョン・ウーと、女優をどう撮れば魅力的に映るのかを熟知しているツイ・ハーク。本作は製作と監督がツイ・ハークであるが故に、アニタ・ムイの魅力がさく裂している。アンジェリーナ・ジョリーもかくやと言わんばかり”A★NE★GO”っぷりが素晴らしい。

”2丁拳銃を教えたのもアタシだし、アンタを(性的な意味で)オトコにしたのもアタシ”というキャラクターなのは分かるのだが、『男たちの挽歌』ファンとしては分かっていても拒否反応が出ても仕方ない。チョウ・ユンファ演じるマークのカッコ悪いところなんて見たくねえ!!

 

が。

改めて観賞してみると、なんというか、味わい深い作品。

 

確かにアクション映画ではあるのだが、それ以外のトーンは完全に文芸映画。 『風の輝く朝に』を思い出した。ちなみに、こっちも主演はチョウ・ユンファ

風の輝く朝に デジタル・リマスター版 [DVD]

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戦争という個では抗えない圧倒的で不条理な暴力の中での青春、そして恋愛。

「ホントに『男たちの挽歌』シリーズなのか?」と時々思ってしまうくらいに、ものすごく文芸映画だ。脚本の安定感もそうなのだが、やっぱりレオン・カーフェイという演技派俳優の起用が、一層この映画を文芸映画要素を高めている。

本作を除いた『男たちの挽歌』シリーズが壮絶な銃撃戦に代表されるフレッシュなアクションで魅せる映画なら、この『男たちの挽歌3』は明らかに物語に軸足を置いた映画だ。真逆の魅力でアピールする作品だけに、シリーズの中で浮き上がってしまい、熱心なファンであればあるほどナシ扱いされるのも仕方ないなあ……。

 

加えて、評判の悪さの一因が本作の製作過程にある。

ジョン・ウーが温めていたプロットなり脚本をツイ・ハークが勝手に自身のメガホンで映画化してしまった、というところが大きなマイナス。

ジョン・ウーツイ・ハーク、双方言い分があるのだろうが、名コンビと思われていた二人を決裂させた作品、というレッテルが作品自体の足を引っ張っているような気がする。

余談だが、この仕打ちに激怒したジョン・ウーは、全く同じ脚本を元に『ワイルド・ブリッド』を監督したが興行的に大失敗した。

作品どうこうという以前に、あんなに重苦しい映画をよりにもよって旧正月のもっともオメデタイ時期に公開したことが全ての原因。それって、新年一発目の映画が『火垂るの墓』だったり、クリスマスにカップルで見る映画が『愛・アムール』一択、というのと同じだ。

繰り返すが『ワイルド・ブリッド』はジョン・ウー映画にあるまじき、全くスカッとしない作品だ。

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当然それはこの『男たちの挽歌3』にも言えるのだが、ツイ・ハークが得意とする恋愛映画としての語り口の効果なのだろう、『ワイルド・ブリッド』よりは救いがある。

っていうか、シリーズの前日譚なので「なんだかんだ言っても、これがマークを成長させたんだな」という風に精神的に着地できるから、まあ、多少の後味の悪さに目をつぶることが出来るのだ。

脚本の力だな、これは。

『ワイルド・ブリッド』も凄まじい映画ではあるのだが、前半と後半で脚本が破たんしているという重大な欠陥があることを考えると、同じストーリーならコッチに軍配を上げたい。

 

少なくとも『男たちの挽歌』シリーズの一作、ということを度外視すれば傑作だ。

でも、シリーズの一作と考えると、やっぱりちょっとなあ……。

 

【追記】

本作の主題歌はアニタ・ムイの唄う『夕陽之歌』。

昔の歌謡曲チックなメロディが哀愁を誘ってグッとくる。

なお、アニタ・ムイは2003年にガンで他界。40歳の若さだった。


梅艷芳- 夕陽之歌- YouTube