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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

スコット・ピルグリムVSザ・ワールド/ブライアン・リー・オマリー

読書【マンガ】
スコット・ピルグリム VS ザ・ワールド

スコット・ピルグリム VS ザ・ワールド

 

カナダ・トロント在住のマンガ家、ブライアン・リー・オマリーによる青春ドタバタコメディ。無職のダメ人間スコット・ピルグリムが、バンドや恋愛を通して成長していく物語だ。

既にエドガー・ライトによって映画化されていて、正直興行成績は振るわなかったようだがオイラは好きだぞ。あの映画。


スコット・ピルグリム VS.邪悪な元カレ軍団 - YouTube

 

んで。

 

既に映画で見てるんで結末までのストーリーはもう学習済みなんだが、それでもこのマンガは面白い。でも、正直、日本のマンガに慣れきった身からするとキビシい点が多数あるのは事実だ。

最初この本を手に取ってパラパラと立ち読みしたとき、真っ先に感じたのが、

「すげえ読みにくいぞ、このマンガ」

絵柄とか、表現が、とか言う問題ではなくて、単純に本の開く方向が逆だから。

日本のマンガは右開きで、フキダシのセリフは縦書きだ。

でも、この『スコット・ピルグリム』は左開きで、フキダシのセリフは横書き。

この辺が直感的に読みにくいと感じた原因だ。

まあ、こんな程度のものは原因が分かってしまえば大したことはない。実際、割とあっさり慣れた。

 

作品のストーリー自体は、日本のマンガではよくあるものだし、新鮮味にかけるのは事実。でも、それをカナダのガイジンがやっているというところに驚きがある。

だって、高橋留美子の『うる星やつら』や『らんま1/2』をベースに、木尾士目の『げんしけん』や平野耕太の『以下略』や『大同人時代』、かきふらいの『けいおん!!』とかをブチ込んでみた、っていう感じなんだもん。

ホントにこれって、日本じゃオリジナル&二次創作を問わず大量にあるわけだが、それが海外経由で日本に遣って来たというのが、意外性であり、新鮮味だ。

 

こういうのを見て「これがクールジャパンの成果だ」とドヤ顔を決める政治家がいるだろうが、それは勘違いも甚だしい。

結論から言っておくと、マンガやアニメに関して『クールジャパン』はとっくに終わっているのだ。

 

まず、アニメ。

ハッキリ言ってDVDは売れていない。

外国人にしてみれば「これって日本じゃTVでタダで放送してるんでしょ?」なので、わざわざ買わずにネットで見るのは当然の結末だ。だって、元がタダなんだし。

ポケモンに関しては、既にブームが過ぎ去った感があるし、ジブリのブランドは日本人が思うほど強くない。あれは基本的にアニメーターやディズニー関係者しか見ていないし、売り上げという点では全くお話にならないレベル。

一応、ビルボードの外国映画チャート(実写作品も含めた外国映画)で1位を取ったのが『攻殻機動隊』。これはハリウッド映画関係者に多大な影響を与えたが、*1それだって「いつの話だよ!!」という……。

 

次に、マンガ。

こっちはもっとわかりやすい。確かに『NANA』や『ドラゴンボール』は大ヒットしたが、そうなると当然の帰結は「じゃあ、描いてみよう」。

実際、日本的な漫画の描き方のハウトゥー本は売れていて、スクリーントーンGペンなどの道具も売れ行きを伸ばしている。なにより『バクマン』みたいにマンガ製作の裏側を描いた作品もあれば、ネットで幾らでも紹介されている。ペンタブやイラストソフトもたくさんあるしね。

実際に、日本で活躍している外国人のマンガ家もいる。

それが彼女、夏達(シャア タア)

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絵柄やストーリーから察するに、CLAMPPEACH-PIT渡瀬悠宇種村有菜とかに影響を受けてそう。

まあ、そんなことはどうでもよくて、中国人である彼女は現在、ウルトラジャンプ誌上で『長歌行』を連載中。

長歌行 1 (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)

長歌行 1 (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)

 

さすがに台詞は翻訳されているとはいえ、本国で連載されたものを翻訳して転載する、というのではなく、日本のマンガ雑誌に連載を持っている、という状態だ。

彼女の活躍がしめすように、ジャパンカルチャーの一方的な享受からそれを元にオリジナルの作品を創作するという段階に至っている。『クールジャパン』などという幻想はもう終わったのだ。

っていうか、「すげえ」という作品がでてきたら「真似してみようぜ」ってなるのはごく当然の成り行きだよね。どのジャンルでもそうやって進歩してきたのだ。

 

実際、ブライアン・リー・オマリーもそうだ。

巻末にある解説を見るととても面白いのだが、日本のマンガやアニメがずらり。そのうえ、それらが自分にどう影響を与えたか、だけではなく、「作中にこんな感じで使って見ました」という註釈も入るので、余計に面白い。

確かに、画力という点で見ると非常に厳しいのは事実。

キャラクターの書き分けも乏しいし動きも堅い。

フキダシの大きさやフキダシの形、効果音の付け方や集中線など、日本マンガに慣れた目にはどうにもこうにも物足りない。

でも、「日本のマンガ大好き!!だからそれを真似してオリジナルストーリーを作ったぜ!!」という創作魂は素晴らしい。ちゃんと努力の跡も見える。

というか、単純に面白い。そして、色々なものを想像させてくれる。

「近所でGペンとか売ってないんだろうな」「スクリーントーンとかないんだろうな」「アニメのDVDとかサントラとかかけっぱなしにして描いてんだろうな」とか、結局国内外を問わず、オタクの作業風景はほぼ一緒(笑)。

 

それはともかく、あるムーブメントをきっかけに新しい才能や作品が誕生するのは、単純に面白いし楽しい。影響を与え・与えられという極めて健全なサイクルの中にジャパンカルチャーがある、というだけでうれしくなりませんか?

 

そういうものに対して「日本が起源だから」みたいなことで水を差してほしくないんだよなあ……。っていうかさあ、「クールジャパン」っていうのは相手からの称賛であって、自分から言うものじゃないんじゃないの?

 

【追記】

本作『スコットピルグリム』はゲーム化もされた。

PS3の大容量&高性能を駆使しながら、完成したのは12Bitなスーファミ感満載の横スクロールアクションゲーム。

お前ら、レトロ感にもほどがあるぞ(笑)時代に逆行しすぎだろ(笑)っていうか、オイラの目には『熱血硬派くにおくん』にしか見えねえ(笑)


Scott Pilgrim Vs. The World Game Trailer (E3 2010 ...

そうは言いながらBGMが最高なんだよね。このゲーム。

ってなわけでサントラから1曲ドーゾ。


Scott Pilgrim Vs. The World The Game OST -9 Rock ...

 

【追記 その2】

記事を読み返して、CLAMPPEACH-PIT渡瀬悠宇種村有菜など一昔前の萌えマンガの作者名がすらすら出てくる自分を心底キモいと思いました。

*1:ウォシャウスキー兄弟はワーナーの関係者にプレゼンした際、『攻殻機動隊』を見せて「このアニメを実写化します」と売り込みしたのは有名な話。そして誕生したのが『マトリックス』だ。