眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

エクソシスト【オリジナル劇場公開版】

エクソシスト プレミアム・ツイン・パック [DVD]

エクソシスト プレミアム・ツイン・パック [DVD]

 

73年に公開され、全世界を恐怖のどん底に叩き落した映画史上に残る問題作。

この映画によって”オカルトホラー”というジャンルが確立したことを考えると、とてつもない影響力を持った作品と言える。

どのくらい影響を与えたかというと、まずはこれをご覧いただきたい。


Seytan (Turkish "The Exorcist") Part 13/14 - YouTube

映画のタイトルは『Seytan(セイタン)』。

イスラム教圏のトルコで作られた”トルコ版エクソシスト”。ストーリーラインは元の『エクソシスト』とほぼ一緒で、イスラム教の牧師さんによる悪魔祓いが行われる。

宗教の全く異なる国でも模倣作品が作られたということは、それだけ世界中の人間が見たということの証でもある。

みんな『エクソシスト』を見て恐怖に打ち震えた訳だが、一体なぜそこまでこの映画が恐ろしく、そして今なお脈々と見られ続けているのか?ということを考えてみることにする。

 

そういう訳なので、エクソシストを見たことがないという人は速攻で見るように。

ってか、むしろ買え。

ディレクターズカットだの特別編だのとたくさんのバージョンのある『エクソシスト』だが、買うべきはブルーレイ。

何しろブルーレイは2枚組。

片方がDVDとかいうのではなく、ブルーレイディスクの2枚組。

ディレクターズカットと劇場公開版の2枚組で、それぞれに特典として劇場予告編やメイキング、特殊造形を担当したディック・スミスやキャストへのインタビューが満載。そのうえ、監督のウィリアム・フリードキンの音声解説も収録。

しかもこの解説がディレクターズカットと劇場公開版とで内容の異なる音声解説という豪華仕様。

それにもかかわらず、お値段は何とお得な¥1,409!!*1

どうかご購入いただきたい。m(_ _)m

エクソシスト ディレクターズカット版 & オリジナル劇場版(2枚組) [Blu-ray]

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さて。

 

そういう訳で、映画史上に残る大傑作『エクソシスト』。

公開が73年であることを考えると、もう40年も前の映画になるんだなあ……。

正直、昨今のスプラッターホラーとかと比べると、驚くほど地味な映画であるのは間違いないだろう。っていうか、40年も前の映画だしな。そりゃ仕方ない。

でも、それにもかかわらず『エクソシスト』は今見ても十分に怖い。

何故怖いのかというと、このお話が誰にでも起こりうる不条理な災厄を描いている、というのが最大の理由に違いない。

 

見ていない人ほど、この映画を「キリスト教の悪魔祓いの話でしょ?」と鼻で笑いがちだけど、ちょっと待ってほしい。

なぜなら、エクソシストの恐怖の源のひとつがここにあるからだ。

悪魔憑きに見舞われる少女の家庭は、女優の母親と娘の二人家族。

保守とリベラルでいえば、完全にリベラルな家庭で、こと宗教心に関しては非常に希薄。劇中には出てこないが、いわゆる礼拝的なものには関心がなく、カレンダー上の宗教的な行事(例えば感謝祭だとかクリスマスだとか)はパーティーを行うためのものでしかない。この辺は、日本人のキリスト教的行事に対するスタンスとよく似ている。

だが、悪魔はそんな宗教心の希薄な家庭にもやってくる。

話の展開上、儀式はキリスト教形式だが、根本的な部分で”特定の宗教に因らない”という部分が暗に提示されているため、たとえどんな宗教を信仰していようと(無宗教であっても)この不条理な災厄に見舞われるかもしれない、というぼんやりとした危惧を訴えかけてくる。

ココが恐ろしい。

 

そして、ここに”悪魔に憑りつかれる”という不条理極まりない現象そのものが加味されてくる。

繰り返すけれど、この”悪魔に憑りつかれる”という現象は全く不条理そのものだ。

少なくとも本作『エクソシスト』のなかでは、リーガンに悪魔が憑りつく理由や因果関係がない。冒頭で出てくるパズス像はあくまでも「この悪魔が憑りつきますよ」といった程度の顔見世であって、因果関係を示すものではない。

つまり、この”悪魔憑き”という不条理な存在はひとつの暗喩であって、我々の住まう日常に起りうるor存在し得る何らかのものを象徴している。

文学作品でいえば、これにドンピシャなのがフランツ・カフカの『変身』

変身 (新潮文庫)

変身 (新潮文庫)

 

 何度か繰り返して『エクソシスト』を見るうち、この映画は視点を変えて見ている『変身』なんじゃないか?と思うようになった。

ぜひ、合わせて読んでみることをオススメしたい。

 

で。

 

悪魔という、見ることが出来ず、形のない圧倒的な不条理と相対したとき、人は何に救いを求めるのか?というのもこの映画の隠れたテーマ。

それがこの作品上は宗教ということになる。

実際問題として、曖昧さを許さない西洋医学を筆頭とした科学万能主義と、曖昧なグレーゾーンを許容する宗教的精神文化との比較が、映画のなかでは非常に顕著。

特に前者が必要以上に冷たく無機的に映るよう演出されているのは、間違いなくそういった比較論を提示するためだろう。

同時に、70年代という60年代のヒッピームーブメントやLSDなどを使用したサイケデリックムーブメントの終焉に引っかかった時代背景もここに加わるのかもしれないけれど。

 

エクソシスト』というと、どうにも代表的なイロモノホラーとくくられがちだけど、監督のウィリアム・フリードキンは前年『フレンチコネクション』という傑作アクション映画でアカデミー監督賞を獲っている。

その彼の受賞後第1作となるのがこの『エクソシスト』。

その気合の入り方たるやハンパではなかった……という話はまた今度。

 

とにかく、『エクソシスト』はオススメです。

っていうか、もはや見てないと恥ずかしいレベルですよ。

 

【追記】

本作のスペシャルキュートなヒロイン、リーガン役のリンダ・ブレアも今や50代。

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女優人生は紆余曲折あったけど、まあ、元気そうなので何より。

 

あと、”『エクソシスト』の呪い”とかいって「リーガン役の女の子が撮影後に死んだ」という都市伝説があるけど、それは別の映画。

ちなみにそれは、『ポルターガイスト』シリーズのヘザー・オールクちゃんのことだ。

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製作:スティーブン・スピルバーグ&監督:トビー・フーパーという「悪魔のいけにえジョーズで激突」という豪華な組み合わせもさることながら、ヘザーちゃんを含めたキャスト&スタッフに降りかかる不幸が凄まじい。

具体的には……

  • 1作目の公開直後に長女ダナ役のドミニク・ダンが交際相手に殺害され22歳で死去。
  • 2作目のケイン牧師役ジュリアン・ベックが公開前に胃癌で死去。
  • 2作目の祈祷師テイラー役ウィル・サンプソンが公開翌年に腎臓疾患で死去。
  • 2作目の監督ブライアン・ギブソンが2004年に悪性骨腫瘍の一種であるユーイング肉腫で死去。
  • 3作目の撮影直後にヘザー・オルークが12歳で急死。

完全に呪われてんじゃねーか、この映画!!

なお、3作目のタイトルは『ポルターガイスト3/少女の霊に捧ぐ』。

……ホント、商魂たくましいなあ。

 

*1:通常版でこの仕様というのは驚きだ。ここまでくるとお得というのを通り越して何か申し訳ない気になってくる。だって単純計算で1枚700円だぞ!?