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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

図書館戦争

映画【アクション】

この映画に携わった人、あと、この映画が大好きな人には大変申し訳ないが、ここ何年かで見た映画のなかではダントツに近いくらいのワースト。

一応書いてはおくけれど、褒める部分や評価できる箇所は皆無に等しいし、メディア規制のディストピアものという鉄板かつタイムリーな題材を扱っておきながら、これほどまでにダメな作品が出来上がってしまったことに愕然とする。

理由は後述するけど、この映画を観終って思ったのは「マイケル・マンはやっぱ掛け値なしの天才なんだな」ということだ。

なにはともあれ、すげえひどかった。

 

 

オイラが見ていて一番ヒドイというか、最初から最後まで全く分からなかったのが作中で施行されている『メディア良化法案』の実効性だ。

大枠の部分は理解できるが、はっきり言って随分腰が引けた半端な法案だと言わざるを得ない。……うーん、ずいぶんぼやけた言い方をしているな。

この際だからハッキリ書いてしまおう。

規制と弾圧が余りにもゆるいし優しすぎるのだ。

 

例えば、冒頭での出版規制。

本屋の店先から本を撤去する、というのは法的効力を持った強制というよりは、自主規制程度のニュアンスにしか思えない。まあ、図書館戦争という”本というモノ”を巡る物語だと好意的に解釈することもできるんだけど、普通は印刷所を押さえるよな。普通は。

あと、エロサイトのエロ画像を見られないように規制をかける場面も登場するが、サイト自体をつぶしたりはしない。「エロ画像はけしからんが、エロサイトはOK」って理屈がよく分からないんだが……。

代表的な部分を列挙してみたが、改めて非常に甘い規制であり弾圧だ。

なんというか、これなら別にいくらでも抜け穴があるだろうし、図書隊などと組織化した軍隊ごっこをしなくても解決の方法があるようにも思える。

戦前戦中の規制・弾圧法の最たるものが『治安維持法』だったわけだが、それに比べるとザル法というか、作り手自体がこの『治安維持法』を念頭に置いていないことが丸わかり。「エンタメに徹しました」というのは自分たちの手抜き具合を”わかりやすい=エンタメ”という理由に置き換えてるに過ぎないぞ。っていうかさあ、わかりやすくもなってねーよ。

規制がこんな具合なんで弾圧なんてもっとひどい。

冒頭、図書館で銃を乱射し、人ごと図書館を焼き払ったシーンも、まあ迫力はなかったが権力の暴走っぽくて多少良かったような気がしたが、その後「●月×日に図書館を攻撃しますんで」「わかりました。受けて立ちましょう」みたいな、運動会のエール交換かよ!!という甚だ気の抜けたスポーツマン精神にのっとった弾圧。

バカなのか?

弾圧部隊位の人たちも総じていい人が多く、いきなり暴力に訴えたりしない。

っていうか、規制の対象である図書館で本を読んでる市民は敵として認識してもいいんじゃないか?と思う。あれだけ武装してるくせに、本屋から本をぶんどるときは丸腰なんだね。なにこの弱そうな連中。

最も理解に苦しむのは、図書館を利用する人間は弾圧の対象外、という点だ。

冒頭で殺してたよな、アンタら(笑)

図書隊に対しては苛烈な攻撃を加えるが、一般民衆は傷つけませんという明らかに矛盾した論理設定がまるでブッシュ政権下のイラク戦争を思わせ、この映画の社会性を如実に表している気がするが、他にやるべきことが山ほどあったんじゃないですか?

 

もしかしたら、製作委員会制の悪い部分が出たのかもしれない、と脚本家だけの責任ではないと考えてもみる。

「強烈な弾圧シーンを加えるとお客さんが……」

「暴力シーンを減らして、お子さんでも大丈夫にしてきましょう」

「描写に問題がないようにソフトな感じで……」

とかいうやり取りがあったんだろうか?とにかく、中途半端という以前に、描こうとするテーマの本質から完全に逆行してしまっている。

どう考えても、表現やメディアを徹底的に浄化することで生まれるのはディストピアなわけなのだが、作り手側にそういった発想があるようにはとても思えない。

「エンターテイメント作品だから誰でも見れるような、刺激抑え目にしました」というのは怠慢であってサービスではない。

どうもそのあたりの希薄さというか、取り違えがこの映画を完全無欠のゴミ映画にしている気がする。

 

ちなみに、ほぼ同じテーマを扱った映画が傑作『リベリオン』。

リベリオン -反逆者- [DVD]

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図書館戦争』に携わったバカどもはこの映画を100回見るように。

あとウォーレン・ベイティの『パララックス・ビュー』も100回見るように。

宿題だ。

パララックス・ビュー [DVD]

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とにかく、作品の本質であろう”表現に対する規制と自由”への扱いがずさんで不細工でヒドすぎる。

原作は未読なので安易な判定は下したくないが、映画でコレかと思うと、正直原作には手が伸びないな。残念ながら。

とにかく、脚本以前のお話の組み立ての部分からして重大な欠陥があったとしか思えず、かと言ってそれが製作委員会という多くの人間の手によって修正されることもなく、徹底的に悪化した結果のダメ脚本。

三人寄れば文殊の知恵とはいうけれど、バカが雁首集めたところで天才になれるわけでもないからねえ……。

 

 

ストーリー的な部分は実はまだいい。多少、「ちょっと、いいんじゃない?」という部分が垣間見える瞬間があるからだ。

が。

それを徹底的に破壊するのが、戦闘シーン。

原作者は”ミリタリーに強い”と評されているようだが、そんな人がこの程度のモンで満足してていいんだろうか?

別に『プライベート・ライアン』や『ブラックホーク・ダウン』、『ネイビー・シールズ』みたいにしろ、とは言わないにしても、はっきり言ってお粗末極まりないぞ。

ココの部分に、最初で書いた「マイケル・マンは掛け値なしの天才なんだな」というのが絡んでくる。

登場する銃器にキャラクター付けが全くなされておらず、プロップガン*1のレンタル会社に適当に見繕わせたようにしか思えない。

だいたい、部隊ごとに装備されている銃が違うなんていうのは、作戦行動に支障が出ると思うぞ。あと、図書隊もたぶん89式アサルトライフルだとおもうけど、それを装備していながら、それより口径の小さいイスラエル製のUZを装備する意味が分からない。

政府側もAK47だったり、M16だったり、89式だったり、フリーダムすぎる(笑)

この当りのテキトーさ加減が、図書隊の置かれている状態や政府軍隊の状態を全く表していないので、”ただ戦っている”という風にしか見えてこない。

第一、図書隊は武器をどこから入手してるのだろうか?89式アサルトライフルはそのへんのスーパーとかじゃ売ってないぞ。こういうところがいちいちガッカリする。

そういう意味ではマイケル・マンは天才だ。

それぞれのキャラクターの個性にあった銃を適切に配置するし、なにより、徹底的に銃撃や作戦行動のトレーニングを役者に課すことでも有名。

とにかく彼の映画のなかでのアクションの無駄の無さは非常にスタイリッシュだ。

図書館戦争』のヌルくてモタモタした動きとは天地の開きがある。

「この銃なら悪人が持った方がいいのか正義の側が持ったらいいのか?」というところが非常に明確かつ的確なため、一層キャラクターに深みが出てくる。

『ヒート』がその最たるものだが、強盗団は寄せ集めのバラバラの銃器で、警察側は正規納入による統一メーカーの銃器で武装、という明確なキャラ付けがされている。

銃の名前が分からなくても、みんな違った銃を持っているのと同じ銃を持っているのとでは集団としての様相が変わってくる。これがマイケル・マンが”マン師”と呼ばれて尊敬される所以。こんなことを書いていると、マイケル・マンの映画が見たくなってくるんだよなあ……。

 

こういうことを言うと「ガンマニアを対象にしてるわけじゃないんで」と言い訳されるかもしれないけど、その割には戦闘シーンもやる気が感じられないのですが。

男たちの大和』は確かにゴミだったが、戦闘シーンの血の気の多さはグッジョブだ。

戦争というものが内包している虚無感や絶望感、不条理性が非常によく表れていたように思う。っていうか、ドンパチしてんだから、もっと血を出さんとイカン。

映画のタイトルだって図書館戦争なんだしさあ!!

 

思うんだが、岡田と榮倉の恋愛を描きたいんだったら、別に戦闘シーンはいらんかったような気がする。

それこそ菅野美穂黒歴史主演映画『守ってあげたい』*2くらいの感じでさくっとまとめれば、誰も損はしなかったように思う。

守ってあげたい! [DVD]

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守ってあげたい 特典映像&メイキング 菅野美穂 - YouTube

 

人によって好みは分かれるから、『図書館戦争』がゴミ映画だというのはオイラがそういう風に思った、という程度の話だ。

世間的に評価されていることを否定するつもりはない。

特に、全面協力した自衛隊の方々には「貧乏くじを引いてしまいましたね」という他ない。ホント可哀そうだ。

 

だからこそ、最後にこれだけはハッキリと書いておきたい。

「ガッカリだよ!!」

 

*1:撮影用の模造銃のこと

*2:共演は当時人気だった声優の宮村優子自衛隊の全面協力のもとでの訓練シーンがちょっと話題になった。……まあ、内実は自衛隊の広報映画なんだけどね。