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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

ドライヴ

ドライヴ [DVD]

ドライヴ [DVD]

 

鬼才ニコラス・ウィンディング・レフンの出世作。

孤独に生きる主人公が惚れた若妻のために単身ギャングたちに戦いを挑む、というどんだけ任侠映画なんだよ!!とツッコミたくなるほどありきたり&古典的なストーリーラインにもかかわらず、その奇怪でスタイリッシュで斬新な演出でもって、世界中の批評家と観客を熱狂させたカルト映画。

 

日本では本作公開後にレフン・ブームが到来。

過去作『ブロンソン』『ヴァルハラ・ライジング』『プッシャー』3部作が次々に公開&DVDが発売された。

なお、レフン監督の最新作は本作同様、ライアン・ゴズリングを主演に据えた『オンリー・ゴッド』。

オンリー・ゴッド スペシャル・エディション [DVD]

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この『ドライヴ』という映画が本当に大好きで、そして本当にカッコイイ。

なので感想を書こうにも「もう、ビンビンでギンギンだぜ!!イヤッホ~ゥ!!」という非常に頭の悪い文言しか出てこないんだが。

でもさすがにそいつはチト困るので、町山智浩さんやライムスター・宇多丸さんたちの頭のいい批評を引用しながら進めていこうと思います。

 

元々この『ドライヴ』という映画は、70年代に巨匠ウォルター・ヒル監督が撮った『ザ・ドライバー』のリメイクとして企画がスタート。この時監督に指名されたのが『ディセント』や『ドゥームズデイ』で知られるニール・マーシャル

ニール・マーシャルというと、『ドゥームズデイ』というモヒカンヒャッハー映画ディストピア映画の監督して有名で「ボク、『マッドマックス2』と『ニューヨーク1997』がチョー好きなんです!!」という厨二病ボンクラ極まりないジャンルムービー愛に溢れたイイ人。

どのくらい愛に溢れているかというと『ドゥームズデイ』の登場人物としてミラーとカーペンターという人物がチョイ役で登場。明らかに、ジョージ・ミラー(『マッドマックス』シリーズの監督)とジョン・カーペンター(『ニューヨーク1997』の監督)だという……。ホント、好きなんだねえ。

話を戻すと、このニール監督が指名された時の主演は、『X-MEN』シリーズのウルヴァリン役でお馴染みのヒュー・ジャックマン

 

が。

 

色んな問題が絡み合った結果、ニール監督が降板してしまい、企画はいったん白紙に。

その後、もう一度企画が立ち上げられた時、主演に指名されたのはライアン・ゴズリング。『ブルー・バレンタイン』で演技力を高く評価され、若手スターの階段を上り始めた彼の起用はある意味順当。

でも面白いのは、主演契約を結んだ時、契約の中にあったのが”主演俳優が監督を指名してよい”という条項。

これによりゴズリングが指名したのが、本作のメガホンを取ったニコラス・ウィンディング・レフン

 

この指名がすべてを決定づけたといってよい。

もし、当初のようにニール・マーシャル監督で進められていたら、ごくごく普通の『ザ・ドライバー』のリメイクになっただろう。

だが、このニコラス・ウィンディング・レフンという人物が監督したことにより、もうなにがなんだかわからないが超クール&超カッコイイ映画に仕上がった。

だって『ドライヴ』っていうタイトルで逃がし屋の映画なのに、クライマックスがカーアクションじゃないという驚愕の展開(笑)。*1

 

ライアン・ゴズリングが仕事を請け負う場面から、カーチェイスシーンの終わりまで。冒頭からして超スタイリッシュ。そこにかぶさるようにしてオープニングクレジットがネオンピンクの筆記体で現れるところなんてほれぼれする。

でも、カッコイイのはこれだけじゃない。っていうかむしろこんなのは序の口だ。

 

奇妙なほどに鮮やかでくっきりとした色彩のコントラスト。

この偏執的なまでの色彩設計がこの映画全体の奇妙な雰囲気を一層顕著なものにする。

オイラの調べによると、映画全体をトータルコーディネートする、という目的もあるのだけれど、単純にレフン監督が色盲の傾向があり、淡い中間色が認識しづらいからあえてこういうはっきりした色彩設計になったとか。……個人的に、こういうぱきっとした色味は大好きだ。

 

加えて、音楽の使い方も超クール。

80's調の「コレだよコレ‼」とニマニマしたくなる抜群の選曲。

だって、オープニングの手に汗握るカーチェイスシーンが終わり、タイトルバックでかかる曲が、コレだぜコレ‼


Kavinsky - Nightcall (Drive Original Movie ...

もう最高‼*2

 

特にオイラが強調したいのが、演出のタイトさ。

「表情や芝居で表現できるセリフはすべて切れ」というレフン監督の指示により、徹底してセリフの少ない役者の表情や芝居から観客が人物の心情をくみ取るタイプの映画になった。

こんな風に作品世界に集中させ没頭させてくれるタイプの映画は、ただそれだけで傑作というに値する。出ている役者の魅力も一層際立つってもんだ。

特に、孤独なドライバー(ライアン・ゴズリング)と隣の部屋の幼な妻(キャリー・マリガン)との間に淡い恋心が芽生える瞬間といったらさあ……。

「好きだ」とか「愛してる」とか一切なく、互いに見つめあい、手を握る、というただそれだけなのに、二人の心がありありと見て取れる。

もし、これらのシーンをベタな紋切型だと思っている人は、邦画の恋愛映画やドラマを見てほしい。

うざいくらいに「好きだ」とか「愛してる」とか連呼しているはずだ。何でもかんでも口に出して表現すればいいのではない。主張というのは、ここ一番の時にガツンと主張するから、そこに説得力が生まれるのだ。*3

 

それが最高潮に高まるのが、非常に美しく、そしてロマンチックなエレベーターの中でのキスシーン。唐突なシーンにもかかわらず、息をのむくらいに素晴らしい。キスの後の余韻にうっとりするキャリー・マリガンがすごく色っぽい。

 

が。

 

この素敵なシーンから急転直下、ギャスパー・ノエ監督直伝の”頭蓋骨踏み砕きシーン”*4が大炸裂。この恐るべき落差により、作品内の雰囲気が一変するこのシークエンスは圧倒的。

キスの余韻でうっとりしたキャリー・マリガンが眼前で行われる圧倒的な暴力を前に顔を引きつらせる。何度見ても息の詰まるシーンだ。

ゴズリングの表情がそれまでと変わらないだけに、一層彼の内面の凶暴さが伝わってくる。つい、クローネンバーグ監督の『ヒストリー・オブ・バイオレンス』を思い出したり出さなかったり。

 

以後、後半はもうメッチャクチャ(笑)

狂ったようなバイオレンスにもかかわらず、それをまるで高尚な芸術映画のように表現し、演出する。一見ちぐはぐなようで実際に目にすると驚くほど完璧な組み合わせ。

露悪的に見せなくてもいいものを見せておきながら、物語の山場となる様々なシーンをあえて見せないという表現方法も、とんがっている。

 

とにかくこの映画、ジャンルにカテゴライズするのが難しい。アクション映画でもあるし、恋愛映画でもあるし、サスペンス映画でもある。ありとあらゆる映画の要素を色濃く含みながらも、そのどれでもないという奇妙な作品。

でも、この奇妙さが非常に心地よい。

 

とにかく、このニコラス・ウィンディング・レフンという才能を知らないのは、人生を損しすぎてる。

ホント、とてつもない才能だ。

 

 

【追記】

これだけのカーアクション映画を撮っておきながら、レフン監督は自動車免許を持っていない。彼曰く「本試験で6回落ちたからあきらめた」とのこと(笑)

*1:アメリカでは、『ワイルドスピード』みたいなのと思ったら全然違うじゃない‼!というのを理由に、映画館を相手取った訴訟に発展した。

*2:TBSラジオ『ウォークエンドシャッフル』内の映画評コーナーでは『ドライヴ』を鑑賞後、深夜に車を爆走させるという奇行に走る輩が多数出現。なお、みんなして本作のサントラを購入した模様。

*3:特にNHKの朝ドラに顕著。人物の心情をすべてセリフで表現しようとする姿勢は”副音声映画”と揶揄される。その最悪の例が一連の山崎貴作品だ。

*4:作中9分間にも及ぶ胸糞悪いレイプシーンが大問題となった『アレックス』に当該シーン(消火器で頭を叩き割る)が登場。ちなみに、レイプされる役がモニカ・ベルッチで、レイプする役がヴァンサン・カッセル。夫婦でこういう役って、何をやってんだ?と思わないではない。この変態夫婦め!!(ほめ言葉)※2013年に離婚。