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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

メイド・イン・L.A.

メイド・イン・L.A. EMD-10024 [DVD]

メイド・イン・L.A. EMD-10024 [DVD]

 

巨匠マイケル・マン監督の初期作品。出演はスコット・プランクアレックス・マッカーサー

あらすじとしては、

LAで大胆で冷徹に犯罪を重ねるパトリック。ヴィンセントは、捜査の陣頭指揮を執り、パトリックを追い詰めていく。白昼の路上での大銃撃戦は強烈な迫力。

なのだが、このあらすじでピンときた人もいるだろうから、さっそくそれを代弁させてもらうことにする。

「ちょっと待て!!『ヒート』と一緒じゃねえか!!」

 

はい。その通りでございます。

 

本作『メイド・イン・LA』を巨額の予算とスターの起用でもってセルフリメイクしたのがあの大傑作『ヒート』。

そのため何から何まで『ヒート』であり、まったくもって新鮮味ゼロ(笑)。

なので見てるこっちもどうすりゃいいのか若干困る(笑)。


HEAT ヒート Al Pacino de niro japan trailer - YouTube

 

で。

 

新鮮味ゼロで若干困らされた挙句、大して面白くなかったのなら何の問題も無いんだが、これがまたとてつもなく面白い映画なところが余計に困る(笑)。

そりゃ、天下の『ヒート』の元作品だからねえ、面白くないはずもないんだが。

ともあれ、作品の内容とか感想の前に、これを撮ったマイケル・マン監督について、まずはつらつら書いていこうと思う。

 

マイケル・マン監督といえば、重厚な男のドラマと非常にリアルな銃器描写に定評のある巨匠。テレビドラマ『マイアミ・ヴァイス』で人気を博して映画に進出。デビュー作『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』では、当時最先端の射撃術を登場させ、その後のガンアクションの歴史に多大な影響を与えました。

加えて、犯罪者や警察関係者にたくさんの友人がいるせいか、*1実録映画としては描写といい空気感といい非常にリアル。このあたりも世界中で評価されている部分の一端だと思われます。

銃と犯罪、男のドラマという世界中のボンクラどもの大好物が三段重ねになっているせいか、特に日本ではマイケル・マン監督のことを”マン師(以下このように表記)”と讃え、「マン師の映画に女は来るな!!」*2などというよく分からない男の世界が形成されている模様。

 

そんなマン師の初期作品が本作『メイド・イン・LA』。

映画、といってもスクリーン公開された映画ではなくテレビの2時間枠で放送されたいわゆるテレビ映画。

最初の段階で言っておくと、後年の『ヒート』と比較するのは酷だろう。

予算の規模が完全に違うし、何より『ヒート』のようにアル・パチーノロバート・デニーロといった大スターが一切出ていない。一応、アクション映画で脇を固めることの多いマイケル・ルーカーが出演陣のなかでは出世頭と言えるけど、まあ、マイケル・ルーカーだしねえ……。

とはいったものの、このよく知らない俳優が出てるというのはマイナスポイントではない。むしろ、その部分は個人的に『ヒート』におけるマイナスポイントだったりする。だいたいパチーノとデニートはどっからどう見てもパチーノとデニーロにしか見えないんだもん(笑)。まあ、それがスター性ってのはわかっているけど。

さらに言うと、『ヒート』における違和感としてパチーノもデニーロも妙に精神性が若くてちょっとそこがノリきれなかった部分。まあ、見てるうちに慣れたといえば慣れたんだが。

その部分ではこっちの『メイド・イン・LA』に軍配を上げたい。アレックス・マッカーサースコット・プランクも若さゆえの粗暴さであるとか無軌道さとといったものがバッチリハマっている。

正直、これ以後この二人を映画で見ることがないことを考えると、演技面では若干厳しいものがないわけではないけど、気になるほどではない。

逆に考えると、マン師の重厚なドラマ作り、手堅い演出&無駄のない脚本がいかにこの作品の土台をがっちり支えているのかが分かってくる。

 

加えて作られたのが89年という事もあり、いわゆるマイアミ・ヴァイス的なスタイリッシュさだけでなく、80'sのロックミュージックも効果的。まったく絵面がダサく感じないのは見ている方として、ちょっとびっくりした。

 

マン師の映画はリアリズムが徹底している反面、それが少々堅苦しくて重たすぎる時もある。

『ヒート』になかなかノれなかったのはその部分。映画が虚構の芸術であることを考えると、どうしてもディフォルメする部分が必要になってくる。

「実際にはあり得ないんだろうけど、映画内では非常に説得力がある」という映画内リアリティを構築するのが上手いのが、ジョニー・トー監督。

『ザ・ミッション/非情の掟』におけるジャスコ銃撃戦に代表されるような、棒立ちでの銃撃戦は本来的には絶対にありえないんだろうけど、映画内リアリティにおいては逆にそれがプロっぽくみえるという不思議。


The Mission 鎗火 (HK 1999) Johnnie To - mall ...

リアルにすればいいってわけでもないのが、映画という分野の面白いところ。

「ウソはいいけど、ウソ臭い、ウソっぽいのはダメ」というのは作家・安部公房の金言だけど、成る程言い得て妙だ。

 

家庭を顧みず仕事に突き進んでいくヴィンセントと、犯罪仕事の中で孤独を抱えているからこそ女性にやすらぎを見出そうとするパトリック。

二人ともデキる男には違いないんだろうが、とにかく女性に対して不器用。

彼らの中にある男の孤独を感じつつも、最終的には「ホント、おなごは難しい」という結論に至る自分も自分だな、と思わないではない。

正直、こういう男女の心の機微みたいなぶぶんを描くことに関して、マン師はまったく得意でなかったりする。

ジョン・ウーといいサム・ペキンパーといいジョニー・トーといいジョン・フランケンハイマーといい、ハードボイルド映画の監督はみなさん総じて女性の扱いが苦手なのだなあと感じてしまう。照れちゃうのか、それとも意識しすぎて遠ざけちゃうのか、そのあたりの不器用なところが作品に現れているような気がする。

逆にそこが魅力的な部分でもあるのだけど。

 

本作の見どころといえば、『ヒート』がそうであるように白昼のLAでの大銃撃戦。

『ヒート』の時も、銃にこだわるリアル志向のマン師には珍しく街中でショットガンをぶっ放すシーンがあって「ちょっとそれはないだろ」と思ったものだが、本作でもそれが登場(笑)。しかもフランキ社のスパス15というセミオートショットガン。

もしかしたら、「街中でショットガンをぶっ放してみてえ!!」というマン師のダダ漏れた欲望の産物があのシーンかと思うと、イイ人なんだなと思わずにはいられない。

とはいいつつ、予算的に厳しかったのだろう、小火器系のサブマシンガンとかでパトリックの一味が武装しているのは逆にリアルな感じがしてGood。マン師にしては弾倉交換シーンとかが全く出てこないのは、まあ、ご愛嬌。*3

 

こういうのをリアルなミリタリー描写というのだよ。

聞いてっか?『図書館戦争』!!

お前のことだからな!!


図書館戦争 予告編 - YouTube

 

何はともあれ、久しぶりに観たマン師の映画の染みること染みること。

やはり、男のドラマはよい。

さらにいえばこのDVD、超激安のワンコイン500円ぽっきりなのも実に素晴らしい。

マン師の映画が500円ですよ奥さん!!

*1:ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』では、元金庫破りの犯罪者を連れてきて主演のジェームス・カーンに金庫破りの技術を伝授。結果として映画内の金庫破りシーンは一切フェイクのないガチの金庫破りとなりました。撮影後、ジェームス・カーンは「近所で金庫破りがあったら真っ先に疑われるのオレじゃねえか!!」と頭を抱えたとか。

*2:マン師の映画はとにかく男臭くてカッコイイので、ワイルドで危険な香りのする男性でメロメロになりたいお姉さま方にオススメかと思われます。

*3:『ヒート』ではヴァル・キルマーに対し、海兵隊仕込みの射撃訓練と弾倉交換を徹底的に仕込んだマン師。結果として弾倉交換⇒弾丸をチェンバーに装填という一連の動作を僅か2秒で完了させるという驚異のシーンが完成。戦争映画でもここまでのクオリティはありません。