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積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

グランドマスター

グランド・マスター [DVD]

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ブルース・リーの師匠である葉問(イップマン)を主人公にしたクンフーアクション。

 

この映画のことは実は製作発表から知っていて……って『映画秘宝』の新作情報で知ったんですけど、注目作のひとつではありました。

主演がトニー・レオンで、共演がチャン・ツィイーチャン・チェン。そのうえアクション監督があのユエン・ウーピン*1という超絶豪華仕様。

もっとも、当時はドニー・イェン主演の『イップ・マン』が大ヒットしていて、雨後の竹の子ように”イップ・マン映画”がアホみたいに作られていたご時世。そんな柳の下の泥鰌にしてはすんごい映画なんだけど、唯一にして最大の問題を抱えている作品というのも事実です。

だって、監督がウォン・カーウァイなんだもん。

 

ウォン・カーウァイ監督といえば、『恋する惑星』『ブエノスアイレス』などが有名な香港ニューウェイブの代表選手。

スタイリッシュな映像美と独特の語り口によるオシャレな作風は、それまでの泥臭い香港映画とは一線を画します。

 

が。

 

その一方で、現場ではなく編集によって作品を生み出す傾向に関して悪評が高いのもまた事実。

確かあれは『SMAP×SMAP』だったと思いますが、『2046』に出演が決定したキムタクに対してゲストのアンディ・ラウが「あの監督には気を付けた方がいいよ」みたいなことを言ってたのを思い出します。

アンディは『恋する惑星』に出演していたにもかかわらず、完成披露の舞台挨拶にも呼ばれなかったどころか出演シーンを全てカットされたそう。*2

ヒドい監督もあったもんですね。

また、『楽園の瑕』という映画では、公開日当日の上映ギリギリまで編集作業が行われるほど撮影期間を大幅超過。

加えて、武侠アクション映画だと思ったらアクションがほとんどないどころか、登場人物がボロい掘っ立て小屋にかわるがわるやってきては難解で意味ありげな台詞を喋るだけ、という内容に観客からは大ブーイング。興行的に大きくズッコケました。

 

と、まあ、そういう監督なので本作『グランドマスター(原題は一代宗師)』の製作が発表された時、誰しもが思ったはずです。

「完成するの?」って。

 

そんなこんなで、ウォン・カーウァイ監督にしては大作にもかかわらず短い撮影期間で完成した『グランドマスター』。

とはいえ、あくまでも”完成した”であって”ちゃんと完成した”ではないのが重要なポイント。

ジェット・リードニー・イェンクンフー・アクションを期待するとヤケドするような作品にバッチリ仕上がっています(笑)

 

ストーリー的には、北斗の拳というか、北派と南派のどちらが最強なのか?というのを軸にしつつ、イップ・マンとルオ・メイとの決して結ばれることのない恋愛がそこに絡み合う物語。

ストーリーラインから分かるように非常に重厚。で、長い(笑)

123分というクンフー映画とは思えないほどの長尺のため、正直最初の30分で疲れてきました。(´‐ω‐)=з

『グリーンデスティニー』ですら「ダルい」「長い」「飽きた」とプープー文句を垂れる眼鏡堂にはすんげえきっつい映画で、「ウォン・カーウァイの映画は合わないなあ」と思ったり、思わなかったり。

……ゴメンナサイ、思いました。

 

でも、ダルくて長くて重たいだけの映画ではないところは、さすがウォン・カーウァイ監督。っていうか、ぶっちゃけユエン・ウーピンの手柄の部分だと思いますがとにかくアクションシーンの華麗さ&流麗さ、そして重厚さは圧巻の一言。

トニー・レオンを何度か骨折させ、チャン・ツィイーに悲鳴を上げさせ、チャン・チェんを八極拳に目覚めさせるというかなりのムチャの上に成り立っているアクションシーンは驚くべきクオリティー。

もっとも、このクオリティーって芸術映画としての絵面のクオリティーであって、『マッハ!!!!!!!』とか『ザ・レイド』的なガチのアクションとは全く違うのでそこのところは注意が必要です。

でも、チャン・ツィイー八卦掌はチョー★カッコよかったです ♪(`・ω・´)


八卦六十四掌實在很帥by 一代宗師- YouTube

 

結局のところ、東洋哲学を下敷きにした非常に難解で比喩的な台詞の応酬があり、重厚な絵面の中で繰り広げられる恋愛模様があり、”イップ・マン=ブルース・リーの師匠”というドラゴン魂溢れるクンフー映画を期待すると、もんげーガッカリします。

 

加えて、編集で作品を作るという監督の悪い癖は今回も登場。

八極拳の使い手で殺し屋でもあるチャン・チェンは、当初はメインストーリーに絡むキャラだったにもかかわらず、それは編集によって全てカット。

トニー&ツィイーの恋と闘いとは全く無関係にあちこちで戦っているという驚愕の扱い。いいのか?コレ(笑)*3

 

正直に言って、この映画の中心にいるイップ・マンがどーいう人物で、どんなバックグラウンドを背負っているのか?というのが全く説明されず、ただ空虚な中心として位置しているので、すごくおさまりが悪く感じられて、イマイチお話に乗れません。

でも、そういいつつ、「乗れないなあ……」と文句を言いそうになると絶妙なタイミングで重厚なアクションシーンが展開(笑)

なんというか、全編ユエン・ウーピンが監督すればよかったんじゃないの?と思わないではありません。

良くも悪くも重厚な映画ですが、ちょっと重たすぎるような気がしました。

……ウォン・カーウァイ作品のファンだと感じ方が違うのかもしれませんが。

 

個人的に最大の見どころは、チャン・ツィイー

ジアンビューティーのひとりとして有名な彼女ですが、超高解像度のハイデジタルでの毛穴の奥までバッチリ映りそうなドアップに耐えうる美貌はため息モノ。

さすがです。

 

重厚で傑作なのかもしれませんが、自分にはちょっと退屈な映画でした。

でも、途中のストーリーがヤクザ映画というか『極道の妻たち』みたいな展開になるのは、わりと面白かったです♪

*1:チン・シウトンと並ぶ香港映画界の偉大なるアクション監督。『マトリックス』でハリウッドに進出し、以後数多くの大作映画のアクション監督を手がけた。

*2:3年間の時間的拘束(フルではなかったらしい)を受けた結果のこの仕打ち。以後、アンディはウォン・カーウァイ作品に出演していない。……当然だわ。

*3:撮影終了後も八極拳のトレーニングを続行したチャン・チェンは、その年の八極拳の全国大会に出場。編集によって受けた屈辱をバネに、並み居る参加者をシバキ倒して見事優勝。ウォン・カーウァイ監督とその周辺のスタッフをビビらせた。