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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ/ジョン・ルカレ

読書【小説】
ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)

 

元・英国諜報部員という異色の経歴を持つ作家ジョン・ルカレによるスパイ小説。

本作を皮切りにしたジョン・スマイリー3部作の第1作で、2008年にはゲイリー・オールドマン主演で映画化されました。*1


映画『裏切りのサーカス』予告編 - YouTube

枯れた渋いオジサマ萌えというか、引退して身を引いた男が再び戻ってくる、というシチュエーションはとてもとても素晴らしく、鼻息ムッハーです。

ムッハーですよ、ムッハー!!

ムッハー!!!!

 

 

……ええと。

取り乱しました。<(_ _)>スミマセン

 

 

正直、スパイ小説っていままで1冊も読んだことがありません。

……まてよ。

広義の意味で良ければ、門田泰明大先生の怪作*2『黒豹スペースコンバット』が唯一読んだことのあるスパイ小説になるかと思います。

ちなみに、感想とかは聞かないでください。

黒豹スペース・コンバット〈下〉―特命武装検事黒木豹介 (徳間文庫)

黒豹スペース・コンバット〈下〉―特命武装検事黒木豹介 (徳間文庫)

 

 

話を『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』に戻します。

 

舞台となるのは東西冷戦下のイギリス。

既にスパイとしての一線から退いた主人公、ジョン・スマイリーが英国諜報部に呼ばれるところから話は始まります。

機関のボスがスマイリーに命じたのは、英国諜報部:通称サーカスの内部にいる”もぐら”を探し出すこと。”もぐら”とはソ連のスパイのことで、どうやらサーカスの中枢で活動する幹部らしい事が分かります。

なまじ組織の内部中枢にいる人物であるために、スマイリーのような立場的な意味での客観的視点が必要になったからこその人選。

内偵を進めていくうちに、この”もぐら”を潜入させたのはスマイリーの宿敵であるソ連のスパイ、カーラであることが分かり……というのが、本作の大まかなお話。

 

が。

 

手に汗握るスパイサスペンス、みたいなのを期待して読んだら、豪快なまでの肩すかし(笑)

でもこれは悪い意味ではなくて、意表をつく展開。

とにかく小説全体が奇妙な静謐さと虚無感に満ちていて、その中で登場人物たちが蠢き、ストーリーがある一点に向かって集約していく。

なんというか、007みたいなアクションに軸足を置いた小説では全くなく、スパイという存在に求められる人間性というか頭脳戦が主なので、もしかしたら、人によっては恐ろしく退屈な小説、とバッサリ切られるような気も。

でも、眼鏡堂にはすごくすごく魅きつけられる小説でした。

 

組織の内部にいるスパイ(もぐら)を見つけ出す、という作業が、とにかく静かにそして淡々と進む。そうして静かで淡々と進みながらも、主人公スマイリーと彼を取り巻くかつての、そして今の仲間たちとの間にある心の葛藤というか感情の揺らぎが、行間からにじみ出ているような感じがします。

この表の顔と内側の感情との間に大きな齟齬がある、という感覚は、スパイという業種に従事する人間の感情の暗喩に思えて、それが一層この小説の緊迫感を大きく盛り上げます。

 

それに加えて、東西冷戦の真っただ中60~70年代の時代の空気感もすごく引き付けられる魅力のひとつ。

こういう曖昧なものをうまく説明できないので、代わりにもっと頭の良い人からの解説をお願いしたいと思います。

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既に過去になってしまった膨大な記録からもぐらを探し出すという気の遠くなるような分析作業の積み重ねが、作品の大半。

この作業が、スパイ小説で真っ先に想像されるような鉄砲バンバンとは真逆なうえに、スパイ活動の地に足がついた感じが非常にリアルな印象を受けます。

 

ただ、外国人の名前ってなかなか頭に入ってこないし、作中ではニックネームやコードネームで呼ばれたりもするし、スマイリーの話と元・スパイのブリトーの話が平行して進むので、ときどき休憩して頭の中を整理しないと何が何だかわかんなくなってしって、ちょっと大変(T_T)

 

でも、すごく面白い小説だし、何度も読みたくなる小説でした。

『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』オススメです♪

*1:邦題は『裏切りのサーカス』。監督は前作『ぼくのエリ』でその手腕を非常に高く評価された新鋭、トーマス・アルフレッドソン。なお、人気俳優ベネディクト・カンバーバッチも出演している。

*2:低能ボンクラ小説をオブラートで包んだ表現