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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

バウンド

バウンド [DVD]

バウンド [DVD]

 

ラリー&アンディのウォシャウスキー兄弟の初監督作品。

あらすじは、

5年の服役を終えたレズビアンの女泥棒コーキーは、マフィアの伝手でアパートの一室を改装する仕事に就く。隣の部屋で暮らすのは、マフィアのシーザーとその恋人ヴァイオレット。コーキーとヴァイオレットはお互いに惹かれあうようになり関係を持つ。
ある日、シーザーとの生活に耐えられなくなったヴァイオレットは、シーザーが預かっている200万ドルを持ち逃げしようとコーキーに持ちかけ、コーキーは完璧な計画を立てる。

です。

 

ウォシャウスキー兄弟といえば当然思い浮かぶのは『マトリックス』。

なのでSFの人かと思いきや、本作は完全無欠のサスペンス。

それもフィルムノワール*1です。

フィルムノワールというと硬派な男のドラマ。

男と男のセクシャリティという物語の核の部分を、設定や基本的な構造はそのままにそっくりそのまま女の物語に置き換えたところが流石ウォシャウスキー兄弟。

ジーナ・カージョンとジェニファー・ティリーがレズビアン関係にある、というところは真新しくもあり、作品としてのいいアクセントになっています。

そのうえ、ものすごく男っぽいジーナ・カージョンが攻め、すごくおっとりしているジェニファー・ティリーが受けかと思いきや、ベッドのなかでは逆という意外性もステキ♥

とはいえ、レズものには一家言あるデヴィッド・リンチ大先生に言わせると、「『バウンド』は素晴らしいがレズシーンが少なすぎる!!」*2だそうですが、この女性同士のベッドシーンが結構濃厚で目のやり場に困ります (〃ω〃) キャァ♪

 

とにかくこの映画、脚本と演出の完成度が抜群です。

サスペンス演出の王道として、”観客は知っているけど映画の中の登場人物たちは知らない”*3というのがあります。

言葉にすると簡単そうですけど、実はこれがすごく難しい。

これを完璧にやり遂げたというだけでもスゴイのに、更にジェニファー・ティリー演じるヴァイオレットの信用できない語り手&ファム・ファタールぶりも最高。

もう、絶対観た方がいい映画です!!(力説)

 

 

で。

こっからさきは長々とした蛇足。

読み飛ばしてもらって結構です。

 

既にご承知の通り、ウォシャウスキー兄弟の兄ラリー・ウォシャウスキーは現在性転換して姉ラナ・ウォシャウスキーになっています。この辺のトランスジェンダー的な部分を『バウンド』と照らし合わせるとすごく興味深いです。

ジェニファー・ティリーが言う内証的な台詞の重さだったり、物語の中で効果的に使われる壁越しの世界。

これらは、ジェンダー的な意味での”自分が自分ではないのではないか?”という感覚のメタファなのかな?特にジーナ・カージョンのルックスの過度な男らしさが、余計に、男らしさや女らしさというものへの言及なのかな?と思ったりしました。

このへんはなんとなく、中山可穂の『白い薔薇の淵まで』っぽいような……。

白い薔薇の淵まで

白い薔薇の淵まで

 

 

結論から言うと、そこまで同性愛に言及した映画ではないのですけど、広義のアーティスト作品の常として”最初の作品にはその作り手の全てが込められている”なので、余計に気になるのかもしれませんね。

 

 

初監督作品でこの完成度。

後に『クラウド・アトラス』なんていうあんなに込み入った作品を映画化できるのも当然のこと。『マトリックス』しか知らない、っていう人ほどぜひ見てほしいです。

 

ただこの映画、緊張感の持たせ方がハンパないので見てるとかなり疲れます(⌒-⌒)

*1:1940年代前半から1950年代後期にかけて、主にアメリカで製作された犯罪映画を指す。代表的な作品に『現金に体を張れ』『黒い罠』がある。

*2:レズシーンが少なすぎることに不満を抱いたリンチ監督が「もっとレズってんのが見てえ!!」という欲望をダダ漏れにした映画が『マルホランド・ドライブ

*3:この種の最高傑作が『ダイ・ハード』でのハンス・グルーバー。