眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

スクリーンの夢魔/澁澤龍彦

スクリーンの夢魔 (河出文庫)
 

積ん読消化です。

 

仏文学者・澁澤龍彦による映画評。

世代的に、映画が娯楽ではなく教養であった時代の人の映画評なので、町山さん的な映画秘宝系の評論を期待してはいけません。

一番娯楽色が強い作品でも『エクソシスト』どまりで、取り上げられているのは『アンダルシアの夏』『カリガリ博士』『昼顔』『サンセット大通り』といった、古き良き鉄板の名作群。

アカデミックと言えばその通りですが、何となく「べつに澁澤さんが書かなくてもいいんじゃない?」と思ってしまいます。正直、この世代の評論家なら映画評で必ず出してくる&必ず見てる映画なので、余計にそんな印象が。

加えて、そんなに真新しいことが論じられてるわけでもないし……。

数ある類型的な映画評のひとつ、といった感じで、買ったはいいけどパラパラページをめくって「ふーん」というのでずっと本棚の奥に埋もれさせてました。

 

でも、町山さんの映画塾をはじめ、いろいろと映画をお勉強するようになった今読み返してみると「ふむふむ」という感じです。

特に、”怪奇映画の季節”の章の中でさかんに『何がジェーンに起ったか?』を高く評価するくだりが出てきて、「ふむふむ。たしかに」。

ちなみに、『何がジェーンに起ったか?』という映画は本当に怖い映画です。

ホラー映画では全くないのですが、そこらへんのホラー映画の何百倍と恐ろしい映画。

とりあえず、町山さんの紹介をどうぞ。


町山智浩の映画塾!「何がジェーンに起ったか?」<予習編> 【WOWOW】#134 - YouTube

 

本の中で澁澤さん自身が書いているように、”出歩く方じゃない”ので、映画館にわざわざ出向いて見た映画が少ない印象です。殆どの映画はどうやら試写会で見たものらしく、この『スクリーンの夢魔』としてまとめられた映画評も、盟友である種村季弘さんからの紹介だとか。ちなみに、試写会を斡旋したのも彼。

 

なので、と前置くのも気が引けますが、澁澤龍彦×映画の組み合わせはどうも成功しているとは言い難い印象です。

ファンの連想する”澁澤龍彦らしさ”が随分希薄で、「割と普通の人だ」という感想に落ち着いてしまいます。良くも悪くも普通、という。

つまらない本では決してないのですが、澁澤ファンとしては肩すかし。

改めて読んでみると、思ったより普通の本でした。

 

ただ、『エクソシスト』評の中で、科学と宗教の対比にちゃんと言及してくるあたりはさすが澁澤さんと思いました。