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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

なぜ時代劇は滅びるのか/春日太一

読書【評論】
なぜ時代劇は滅びるのか (新潮新書)

なぜ時代劇は滅びるのか (新潮新書)

 

時代劇研究家・春日太一さんによる、”なぜ時代劇というジャンルは衰退していったのか?その原因はなんなのか?”について書かれた本。

イチ時代劇ファンの苦言、と思いきや、飽和状態に陥ったジャンルがどういう問題とともに衰退していくか?について書かれているので、とても興味深かったです。

 

まずは、帯に書かれてる”時代劇がダメになった本当の理由”が刺激的。

  • 「高齢者向きで古臭い」という固定観念
  • 水戸黄門』という特異なシステム
  • 「自然体」しか演じられないヘタな役者
  • 火野正平(=味のある脇役・悪役)」の不在
  • マンネリ演出を打破できない監督
  • 何もかも説明してしまう饒舌な脚本
  • 朝ドラ化するNHK大河ドラマ

特に3番目は、実名を挙げてその役者の下手さ加減を論じていたりして、かなりギリギリのラインです。ちょっとハラハラします。

 

それはおいといて。

 

何でもいいので、ある一つのジャンルがあるとします。

それは何度も開催されてきたイベントであったり、お祭り、みたいなものを想像してください。

ここ最近、どうも人気も客足も右肩下がり。昔は、あんなに活気があったのに。

色んなアイディアをいれてテコ入れもしてるし、思い切ったリニューアルもしたのに。

なぜ?

 

そういう疑問というか、悩みへのひとつの回答が、この本のような気がします。

新書ということもあって、隣に並んでたのは成功のためのノウハウ本や自己啓発本

どうすれば成功するか?という本に、はっきり言って読む価値はありません。

なぜなら、必ず成功する秘訣なんてこの世の中にはないし、仮にあったとしても、簡単に万人に明らかにしたりしません。

普通はそうですよね。冷静に考えれば。

だからこそ、失敗というのは最良の手本になるんです。

 

個人的に気になったのは、6つめと7つめ。

これは基本的に同じことで、とにかく誰に対しても分かりやすいこと、が世の中に過剰にあふれているように思います。

分かりやすさ=作品の質の高さ、ではありません。当たり前のように聞こえるこの図式すら、衰退する時代劇のなかでは、全く採用されていません。

分かりやすい作劇、というのは語りすぎる脚本につながっていき、語りすぎる脚本は演技が下手な役者のカバーにまわり……という具合に悪循環。

時代劇のことについて論じられている本ですが、内容はTVドラマ&日本映画の全てに当てはまります。

ドラマも映画も、考えなくてよくなった、というのが個人的な感覚。

だって、劇中で登場人物が叫ぶんだもん。作品のテーマを。

これじゃ、重厚で映画史に残る作品なんてできないよね。

 

「わからない」というのは悪ではなくて、「わかるまで(受け手が納得のいく結論に自らたどり着くまで)考えさせる」ということ。ドラマにせよ映画にせよ薄っぺらくて軽いのばっかで、そういう作品が少なくなったなあ。

 

作中ですごく印象的だったのが、「ドラマの中に印象的な脇役がいなくなった」という部分。昔の時代劇とか映画とか、そういう主役にはならないけどすごく目を引く脇役、っていう人たちがいたのに。

美男美女ばっかじゃ、作品ってなりたたないんだね。

現実社会と一緒だ。

 

本のむすびとして、”このままじゃ終れない。時代劇の活気をもう一度取り戻すんだ!!”っていう希望で結ばれてて、すごく前向きです。

もう一度、ゴールデンタイムにワクワクするような時代劇の並ぶ時代が帰ってこないかな。