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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

狼たちは天使の匂い 我が偏愛のアクション映画1964~1980 /町山智浩

読書【評論】

 

映画評論家・町山智浩さんのエッセイ集。雑誌『映画秘宝』に連載中の『男の子映画道場』からの単行本。タイトルからわかる通り、主に70年代に公開されたアクション映画についての評論&エッセイ集です。

あとがきのなかで町山さん自身が、この当時の映画を評してこんな風に書いてます。

ここで紹介した映画を、『ダイ・ハード』以降のアクション映画に慣れた若い読者が観ると、地味すぎてガッカリするかもしれない。

たしかに、80年代以降のブロックバスター的な派手派手のアクション映画に比べれば地味だろうけど、逆にリアルタイムではない世代からすると70年代の映画って社会的なメッセージが含まれた手堅くて重厚な作品、っていう感じがします。

たとえば、ここに載ってないけど『ダーティーハリー』とか。

ダーティハリー [DVD]

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70年代映画特有のこの重厚な空気感や、数々の名脚本家によって作られたストーリーライン、そして何より画面を彩るスターたちの存在感。

この当時の映画を、リアルタイムで見て映画監督になった人の代表格がクエンティン・タランティーノなら、さかのぼって勉強したのがベン・アフレック

いずれにせよ、それ以降の映画にはない何かがこの70年代の映画にはあるのだと思います。

 

具体的にどの作品が、というと難しいけど、70年代のアクション映画を観ると感じる特徴は、”暗い”とか”孤独”。あと”殺伐としている”かな。

当時の社会情勢がベトナム戦争であったり、ウォーターゲート事件に代表される政治不信が影を落としているのかな?と思います。

 

加えて、この本で取り上げられている俳優たちの顔面力の強さ。

修羅場を潜り抜けてきた年輪というか、彼らの人生の重み、みたいなものがひしひし伝わってきます。ざっくり言うと、”ただものではない”というような。

本書に収録されている映画に出てた頃のチャールズ・ブロンソンと今のジョニー・デップはだいたい同年齢。

比べてみると、一目瞭然ですね。

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とにかく、暗いし重い。

でも、それ以降の映画のお祭り騒ぎ的な娯楽作が大量生産されたことで、登場人物も俳優も随分軽くなった気がします。

 

個人的にこの本を買ったのは、ルネ・クレマン監督の『狼は天使の匂い』が取り上げられていたから。

眼鏡堂が大好きで尊敬してやまないジョニー・トー監督に多大なる影響を与えたであろうこの作品の詳細な解説&評論に加えて、ジョニー・トー作品との比較論を手元に置いてじっくり読める幸せ。

たまりません♪

 

ただ、チクリと言いたいことがひとつだけ。

狼は天使の匂い』の稿での『エグザイル/絆』のあるシーンについての一文。

空き缶を的にしての銃撃ゲーム、と書かれてるけど、実際はそんなシーンは無くて、登場人物のひとりであるキャットが地面に落ちてる空き缶を撃ち、その缶が空中に富んでいる間にさらに弾丸を撃ち込む、というのが映画の一場面。それに、ゲーム、というよりは彼の凄腕ぶりをみせるシーンなので、ジョニー・トー大好きな町山さんにしては、ちょっと脇の甘い文章だと思いました。

むしろ、主人公がある集団の中に溶け込むきっかけとしてのゲーム、という部分を踏まえると、『エグザイル/絆』よりも『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』における目隠しししての銃の組み立て競争の方がピッタリのような気がします。

ここまでちょっと蛇足。

 

でも、やっぱり町山さんは上手い。

どの映画もいきなり手に取るにはハードルが高く感じてたけど、こうしていったん評論なりエッセイで読んでからだと、すごく興味がわきました。

どんな映画か?を語る本はたくさんあるけど、その映画を見てみたい!という気にさせてくれる本は少ない。そういう意味では、きっかけを与えてくれる貴重な本。

とはいえ、表紙のデザインといい、取り上げてる映画といい、ちょっと男のコ寄りすぎる気がします。

 

ま、仕方ないですけどね。