眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

ぼくのエリ 200歳の少女

 

スウェーデン人監督、トーマス・アルフレッドソンによるホラー映画。

孤独な少年と少女の魂の触れ合いを描いた非常に切なくて繊細な作品。

 

作品についてあれこれする前に、これは大前提なので絶対に書いておかなければならないコトがあります。

「最低だ、この邦題!!」(-_-)/~~~ピシー!ピシー!

各所で言われてはいることなのであまり詳しく書きませんが、副題の”200歳の少女”という文言が、ネタバレであると同時に間違ってるという体たらく。

配給元には猛反省をしてもらいたいところです。ホントにもう!!

 

 

この作品は本当に素晴らしい映画で、見るたびに切なさで心が締め付けられます。

冷ややかで美しい冬のスウェーデンの風景や、主人公オスカーとエリとの孤独な魂の触れ合いと残酷な現実は心を揺さぶられます。

なので、「速攻レンタルしてこい!!てか買え!!」という暴言を吐きたくなるのですが、深呼吸して冷静さを取り戻そうと思います。

 

<深呼吸終了>

 

さて。

 

この映画は少年と少女の初恋の物語です。

初恋、という言葉に対してどう感じるかはひとそれぞれ。

個人的には、”初恋とは最初の恋であると同時に、最初の失恋”だと思います。

淡い恋心が成就しないからこそ、それは初恋という言葉が甘いだけでなく苦さや酸っぱさを孕む。だからこそ、人にとって特別な意味を持つのでしょうね。

その部分の不器用さやもどかしさ、切なさを、この映画は静かに冷たく描きます。

主人公のオスカー君は孤独です。

学校ではいじめられていて友達がいないし、家庭も両親が離婚していてそれぞれ事情を抱えていてかまってもらえない。特に後者に関しては、そういう空気を鋭敏に、それこそ敏感すぎるくらいに感じ取ってしまう年齢だからこそ、よけいに彼は心の孤独を深めていきます。

往々にして、こういうオスカー君のような子供は、親の目から見ると「わがままを言わないしっかりした子」という風に映るのですが、当然、それは彼の内面や心情が理解されていない証拠。

 

さて、ここからちょっと余談。

こういう微妙なお年頃の少年少女が主人公の映画って、なんで邦画だと明るく楽しい学園モノになるんでしょうね?

学校が大嫌いだったので余計にそう感じるのかもしれませんが、学校が舞台の明るく楽しい青春ドラマって見ててそんなに楽しいもんですかね?

傑作と言われてる『桐島、部活やめるってよ』も、「誰が部活をやめようがどうでもいいよ。そんなこと」と反射的に思ってしまうので全く食指が伸びません。

桐島、部活やめるってよ(DVD2枚組)

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明るく楽しい学校生活の対極に、そうなれないで窒息しそうになってる子供達だっているだろうに。

そういう彼ら、彼女らに映画が夢を見せないでどうする。

スクールカーストなんていう胸の悪くなる言葉が大手を振ってる昨今だから、よけいにロジャー・コーマンのいう「必ず政治的には弱者である人の味方に立て。それが映画の仕事なんだ」という言葉をもう一度思い出してほしいと思います。


町山智浩の映画塾!侵入者<復習編> 【WOWOW】#79

ま、余談はこのくらいにして。

 

 

一方のエリもまた、孤独です。

父親らしき人物と二人暮らしですが、学校に行かないし、日中出歩くこともありません。それどころか彼女の家は窓が目張りされていて外からうかがい知ることもできない始末。最低極まりない邦題とこんな書き方から、まあピンとくる人は彼女の正体についてピンとくると思いますけど、それは置いといて。

この孤独な者同士の初恋&初デートのシーンでの切なさと言ったら、もう……!!

エリ「私のこと、好きなの?」

オスカー「……うん」

エリ「……普通の女の子じゃなくても?」

 

精一杯の勇気を振り絞ってオスカー君が抱きしめても、エリは抱き返すこともなく、ただうつろな表情でぽつりと言うだけ。しかも、その言葉はオスカー君の耳に届いていない。まったく、殺人的に切ない場面ですな。

 

最低極まりない副題が示すように、エリの正体はヴァンパイア。

永遠に続く時間の中で、自分の孤独に寄り添ってくれる存在は、いつか年老いて死んでしまう。何度も何度もそれを繰り返してきてもなお、同じ過ちを繰り返してしまう。

このエリの魂の孤独を知るには、オスカー君はまだまだ若すぎるし幼すぎる。

「君と僕 君と僕だけがいればそれでいい」というのは映画『ブルーバレンタイン』のなかで主人公が大好きな歌の歌詞。

この『ぼくのエリ』という映画も、孤独な者同士の”君と僕”の世界。

本当なら幸せなはずのこの言葉も、結末と冒頭のループに気が付いてしまうと、なんと残酷なことでしょう。

 

大作映画、ではないけれど非常に手堅くまとめられた落ち着いた名作。

悲しく切ないラブストーリーとしても十分に鑑賞に堪えると思います。

 

【追記】

本作は、『モールス』というタイトルでハリウッドリメイクされました。

エリにあたるミステリアスな少女を演じるのは、クロエ・グレース・モレッツ

……クロエちゃんが悪いわけじゃないけど、どう考えてもミスキャストだよね。あんなに目がキラキラしたヴァンパイアはいないって。

 

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