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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

ゼイリブ

映画【SF】 映画【ホラー】

 

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今回取り上げるのは、皆さんお楽しみ♪

ジョン・カーペンター監督の傑作SFホラー『ゼイリブ』です♥

 

いきなり『ゼイリブ』とか言われてもなんじゃらほい?という感じですが、このタイトルは劇中に出てくる”They Live We Sleep(彼らは生きている、私たちは眠っている)”から。この『ゼイリブ』という作品では、ここで出てくる”彼ら”というのが非常に重要なキーになります。

 

あらすじをざっと書くと、

ホームレスの主人公ナダは、ひょんなことからサングラスを拾う。ナダがそれをかけてみると、普通の人々の中に醜いエイリアンが混じっているのが見えた。それだけでなく、看板や雑誌に込められたサブリミナルメッセージも見えた。世界はこのエイリアンたちによって支配されていたのだ。

この現実を打ち砕くために、ナダはエイリアンたちに対して闘いを挑むのだった。

これだけだと、よくあるB級SFホラーです。

それを否定しませんし、むしろその通りですが、この作品で注目すべきはテーマ(主題)の部分。

登場するエイリアンとサブリミナルメッセージは、政治家とか財界人みたいな支配階級と、支配階級が施す洗脳についてのメタファ。つまり、テーマとなっているのはカーペンター監督の言うところの「資本主義や消費文化への嫌悪」。*1

 

ずいぶん昔の作品&低予算映画なので、甘いところは確かにあります。

特に、エイリアンの造形が”ザ・低予算!!”なので、まるで小学校の理科室にある人体模型にしか見えません(^_^;)逆にそこが味わい深いです(^_^)v

 

さて。

 

ゼイリブ』では80年代の過剰な資本主義や消費文化にたいしる嫌悪をメタファにしていたわけですが、今現在は更にひどくなっている気がします。

与党側の政治家がまるでこの映画の中のエイリアンのようなのに加えて、テレビや本に込められたサブリミナルメッセージは、もう隠す必要がないほど露骨なものになっています。そのメッセージは、「従え」「考えるな」「逆らうな」「消費しろ」「眠ったままでいろ」など。

とくに最後の「眠ったままでいろ」というのは、実際にそう言い放った政治家もいましたね。*2

 

痛烈な社会批判が込められた作品を、あえてB級SFホラーで作って見せるところがカーペンター監督の軽やかさととるか、いい加減さととるのかはこっち側の問題。

観たときは本当に衝撃的な作品で、1回目と2回目とで見てる間の印象ががらっと変わります。テレビとか新聞とかいろんな情報媒体であるとか、政治家とか財界人とかとういうものに対する恐怖とか嫌悪も覚えてしまうけど、それを踏まえたうえで、自分はどう思うのか、というのについて立ち戻る映画。

 

サブリミナルメッセージについては、政治家の人たちとか財界人の勝手な言い分というか洗脳と消費に尽きるのだなあ、と思いました。

特に「消費しろ」っていうのは完全にアイドマの法則だしね。

www.medi-graph.com

 

(たぶん)ゼイリブ大好きな人が作ったある動画。

この動画の言わんとするところは、政治家の人たちの本音だよね。

あと電通とか博報堂の人とか。

www.youtube.com

 

作品自体は低予算のSFホラーだけど、映画を現実が追い越してしまったという感じ。

世の中はますます悪くなるし、言いたいことも言えなくなる。

エライ人たちの言っていることが圧倒的に正しくて(本質的に正しいかどうかは問題ではない)、反対意見は存在しない。常にエライ人たちを中心にした狭い世界の中だけが正しくて、それ以外の世界は存在しない。

弱い人たちの側に立つ人はいないからこそ、社会福祉よりもオリンピック。

……嫌な時代になってしまったなあ。

選挙時の投票率が右肩下がりだというけど、有権者はこういう空気を敏感に察知してるのかもしれませんね。

選挙で票を投じても何も変わらない。所詮はどのゼイリブに票を入れるかの違いでしかない、みたいな。

成人年齢が18歳に引き下げられて、若者への選挙や政治についてのワークショップが行われているけど、所詮はサブリミナルメッセージの植え付けなのかな?なんていう意地の悪いことを思ってしまったり。

 

いずれにせよ、非常に社会批判をストレートに打ち出した快作でした。

前々から気になっていた作品だったので、大満足です。

*1:「ふたたびテレビを見てすぐに気づいたことは、テレビ画面に映し出される映像は全て、我々に何かを売りつける意図のもとにデザインされているということです。映像はすべて我々に何かを買いたいという欲望を起こさせることを意図して作られているのです。彼ら(映像の作り手)がやりたいことと言えば、我々のお金を奪うことだけです」。

*2:森喜朗元首相「(投票せずに)そのまま寝てしまってくれればいいんですけれども」。2000年6月20日、新潟市内の演説にて。