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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

水木しげるの泉鏡花伝/水木しげる

読書【マンガ】

 

昨年お亡くなりになった水木しげる大先生(おおせんせい)追悼ということで。

妖怪(おばけ)好きで知られた泉鏡花の生涯を、これまたおばけや妖怪で知られる水木しげるが漫画化した作品です。

 

内容は

3つのパート(?)に分かれていて、『黒猫』と『高野聖』は水木先生のマンガです。

泉鏡花の作品は旧かな、旧文体で書かれていて、一見さんには正直しんどいのでマンガで作品に触れることが出来るのはいいことだと思います。

幾つかの作品は映画になったり舞台化されたりしていますね。

ただ、それももはやクラシックの域に達しているので、逆にハードルが高いと言えば高いのが玉にキズ。


映画「外科室」特報

 

漫画化された小説はいいとして、肝心の評伝は割と普通。

泉鏡花というとその異常な潔癖さで知られていて、それが独特の美意識に貫かれた作品たちと相まって一種の奇人として扱われることが多いですけど、このマンガでは割と普通の人に見えます。

ただ、全体的に彼の生涯を語るにしては、圧倒的にボリュームが不足しています。

前半のターニングポイントである、いわゆる婦系図事件は当然としても、もっと後半生についてページを割いて欲しかったなあ、というのがイチ鏡花ファンの要望デス。

形の醜いもの(カニとかタコとか)が食べられないという精神強迫的な偏食で、腐の文字が嫌で嫌でたまらないから豆腐と書く時は豆府と書いたエピソードとか、もうちょっとあってもいい気がします。

加えて、鏡花の周囲の人物が師匠である尾崎紅葉、鏡花の奥さん、くらいしか出てこないのも残念。一回り以上も年下の作家・里見弴に対して、偉ぶりたいけど生来の小心者だからそれが出来ず、結局、敬語で話しかけたり、作品について意見を求められた時も小心だからお酒を飲まないと答えられなかったり(しかも敬語)、という人間としての泉鏡花があってもよかったかも。

 

妖怪はそんなに出てこないし、絵柄が水木先生というくらいで主流になるような作品じゃない気がしますけど、巻末の泉鏡花の年譜だとか、インタビュー集を読むにつけ、この本に対する金沢市の並々ならぬ意気込みが感じられます。

ただ、泉鏡花について語るのに、いくら角田光代さんが泉鏡花賞受賞作家だからといってもあまり適任でないような気が。かといって京極夏彦さんとかだと、かえってあざとい気がするし……。

人選って、ムズカシイですね。

 

ともかく。

泉鏡花作品の入口としては、超初心者向けな一冊。

ひとりでも、こういう明治期の古典文学を読んでくれる人が増えてくれるとイイな。