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眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

蒼白者の行進/中井英夫

読書【小説】

 

蒼白者の行進 (1976年)

蒼白者の行進 (1976年)

 

前回の記事で、ゴスロリだのロリコンだのと鼻息荒く書きなぐった結果、驚くほどに評判が悪かったので、ここは一丁仕切り直さにゃあかん!と猛反省しました。<(_ _)>

改めて読み返してみると、一体何を考えてあんな文章を書いたのでしょうね?

取り上げた『闇のバイブル/聖少女の詩』は非常に良い作品であっただけに、ブログ記事で台無しです。

恐らく、河童に惑わされたに違いありません。きっとそうに違いないんです(断言)

【結論】河童に注意

 

というわけで、気を取り直して。

今回取り上げるのは、眼鏡堂の積ん読消化活動。

中井英夫さんの『蒼白者の行進』デス★

 

中井英夫さんの代表作といえば、ミステリ四大奇書のひとつである『虚無への供物』。

この『蒼白者の行進』もそんな『虚無への供物』路線の青春ミステリ。

70年代の渋谷周辺が舞台で、地理関係や町の光景が事細かく描写されているところが逆に新鮮です。……眼鏡堂が地方住みだから余計にそう感じるのかもしれませんが。

ともかく70年代の時代性、というかアンダーグラウンド文化(天井桟敷をはじめとしたアングラ演劇が華やかだった時代)が作品の核として用いられているのも、そういうのが好きな眼鏡堂にはグッときます。

 

眼鏡堂が中井英夫作品が好きな理由は、とにかく文体。

たしかにミステリ作家として重要な一角を占めている作家ではありますけど、自分自身、ミステリにそんなに興味がないので、ものすんごいトリックとか出されても「ふーん」という反応で終わってしまうという……。

なので、注目ポイントはやっぱり文体。

読みやすい、とか、読みにくい、とかそういうの以前に、作品の雰囲気と文体があっているのかどうか?とか、「カッコイイ」とか「カワイイ」とか直感的に好きな文体かどうか、というのが大事です。

そういう意味では、中井英夫さんの文体はドンピシャ!

たしかに、そこはかとなく漂う厨二感だとかBL臭はありますが、それが絶妙な隠し味になっていて何度読んでも幸せ感が満載デスヽ(`∀´)ノ ウヒョー 

俳優志望の若い19歳のイケメンをマッパにする、というサービスカットが突然登場するなど腐ったお姉さま方必見のシーンも準備されていて、中井英夫さんの欲望がダダ漏れになっている所もスバラシイと思えてきました。

 

川端康成の『浅草紅団』×『虚無への供物』といった具合で、現実に存在する地名やお店を舞台にした青春ミステリ。

最近の作品で近いのは……なんだろ? クドカンの『池袋ウエストゲートパーク

』とかかな? 雰囲気は全然違うけど。

池袋ウエストゲートパーク DVD-BOX

池袋ウエストゲートパーク DVD-BOX

 

 はつらつとした青春ドラマが『池袋ウエストゲートパーク』なら、『蒼白者の行進』は同じ青春ドラマでも随分倒錯的というか耽美な印象。もちろんそれは作者の意図したものであって、このあたりが中井作品の魅力のひとつ。

 

合わせて、本作で物語上の軸になっているのは演劇。

ただ、職業演劇の世界ではなくて、あくまでアマチュア演劇。

そこに関わる若者たちの将来や未来に対する無気力さというか気怠さが、 モラトリアムということばでは形容しきれない何かを孕んでいる感じ。青春=さわやか、みたいな間違った一般常識とは趣を異にしていて、ひとりひとりの登場人物が血の通ったキャラクターとして感じられます。いい意味で、内面が存在する、というか……。

この、演劇、という要素の扱い方が非常にうまくて、芝居の台本がそのまま作中に登場していき、それを軸にストーリーが展開していくという非常に凝った構造になっています。この実験的で野心的なやり方がすごく面白いし、破たんなく入れ込んでいるところに感心します。

劇中劇と現実とが交錯する、というのはみんな考えがちだけど実際に小説にすると非常に難しいシロモノを、見事に小説にして見せる手腕はさすがの一言。

 

 

本当にスバラシイ小説なんです。

スバラシイ小説なんですけどねえ……。

 

 

 

 

 

!!ネタバレ注意!!

『蒼白者の行進』と同時に収録されている『デウォランは飛翔したか』ともに、なんと未完。結末がないので分からずじまい。

まあ、掲載誌が廃刊になった、というのはあるにしても、作者に意欲があっただけに残念。といいつつ、あとがきで開き直っているのにちょっと苦笑。

かえすがえす、ホントに残念。

そこだけが問題かも。

 

 

【追記】

絶版になって久しい作品で、アマゾンとかでもハードカバーの写真とかがない。

せっかくなので貼ってみました。

こういう凝った装丁も中井作品の魅力のひとつ。

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