眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

ドリーム・ホーム

 

ドリーム・ホーム [DVD]

ドリーム・ホーム [DVD]

 

パン・ホーチョン監督によるホラー映画。

高級マンションにあこがれるOLが、家庭の事情等々からその夢を打ち砕かれてしまい、狂気に陥った彼女はその高級マンションの住人達を無差別に殺害していく、というハートウォーミングストーリーバイオレンスホラー。

 

とにかく暴力描写&残虐描写がハンパなく、そういうのが苦手な人は間違いなく見ない方がいいかと思います。

切ったり刺したり引っ叩いたりというお馴染みの手法はもちろんのこと、布団圧縮袋でもって窒息死させるという、おニューなテクニックが登場するなど、殺害方法の新機軸の想像に余念のない姿勢に感心しっぱなし。

実際、本作はかつて隆盛を極めた三級片*1を再び作ろう、というところからスタートしたのだとか。色々怒られそうな気もしますが、かといって、必要以上の自主規制や表現の画一化が進んでいる現在、こういう極端から極端に振り切れた映画はそれはそれで素晴らしいような気もします。

 

単なるエログロだけの暴力映画・残虐映画という側面ばかりが取り上げられる作品ですが、いざ最後まで見てみると、思ったよりもまともな映画というか、結構社会派なテーマを盛り込んだ現代的な作品。

本作の軸になっているのは、不動産の高騰。成功のシンボルである家が地価の高騰などによりどんどん価格が高騰し、とても庶民が手の届くものではなくなってしまうという現実。合わせて、映画のなかでは勝ち組と負け組の対比が非常に露骨。このあたりが何というか人間の低俗性を露悪的に描いていて、個人的には共感が持てます。

ウリのひとつである強烈な暴力&残虐シーンの数々も、非常に直接的なものばかり。こういう直接的な暴力表現は、たぶん怒りや憎しみに現実感を持たせるためなんじゃないかと。じゃあ、何に対する怒りや憎しみなのか? それはもちろん社会や現実に対してですよ!

もしこの映画が一般向けの映画だったのなら、この主人公に誰かが手を差し伸べてくれて、暖かな結末になったのだろうと思います。

でも、現実は違います。

どんなに転落しようが苦しい状態にあろうが、誰も助けてくれません。

ここでいう”誰も”とは具体的な人だけでなく、社会であったり政治も含めてのもの。

とにかく、誰も救われないし、誰も助けてくれない。

だったらどうするか?

その体制そのものに対して牙をむくしかない。……まあ、実際にそんなことしたらいけないわけで。だからこそ、こういう映画を見て発散するという。

 

例えば町山智浩さんの『99%VS1% アメリカ格差ウォーズ』にあるように、一部の人間が無尽蔵に肥え太るのとは対照的に、大多数の人間はどんどんと厳しい生活を強いられています。それに対してせめてこういう低俗と言われる映画のなかでくらい反撃の一撃を加えてもいいんじゃないか?と思ったり思わなかったり。

99%対1% アメリカ格差ウォーズ

99%対1% アメリカ格差ウォーズ

 

 

 

 

暴力表現が強烈なだけの映画で無かったのは一安心。

でも、正直、時世の組み立てがあんまり上手くなくて、過去と現在が脈絡なく行ったり来たりするので、暴力シーンで盛り上がってる最中にしんみりした過去回想に飛んだり、逆にしんみりと過去回想を楽しんでると途端にテンションの高い暴力シーンに切り替わってみたりと、そこはちょっといただけない。

 

まあ、それはそれとして高級マンションの購入に奔走する主人公をジェシー・ホーに演じさせてるのが個人的に面白ポイント。

だって彼女、マカオのカジノ王の娘。超大金持ちですよ!!

それがああいう役を演じるとは……。彼女、製作も兼任してるし、本格女優への第一歩って考えてたのかも。たしかに、あの目力はスゴい。ってか、普通に怖いし(笑)

 

ただグロいだけの映画かと思ったら、意外に社会派なテーマのある面白い映画でした。

ま、みんなにオススメできるものじゃないですケドね♥

 

【追記】

偶然にも、同じタイトルの映画がコチラ。

内容的にもサブプライムローン世界金融危機がテーマになっていたり共通するところが。ちなみに、こっちは万人向けの映画です。血は出ません。


映画「ドリーム ホーム 99%を操る男たち」予告編 #99 Homes #movie

*1:成人指定のエログロ映画。代表的な作品に『八仙飯店之人肉饅頭』などがある。また、三級片映画からはアンソニー・ウォンやサイモン・ヤムなどの演技派俳優を多数輩出した。