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積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を

 

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を [DVD]

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を [DVD]

 

 俳優であり歌手のジョニー・アリディが亡くなった、というニュースを受けて急遽追悼でDVDを鑑賞。

 

あらすじは…

”かつては腕利きの殺し屋だったが、現在はレストランのオーナーとして市井を生きる男、コステロ
彼は過去に頭に受けた銃弾が元で、徐々に記憶を失いつつあった。
そんな折、マカオで暮らす最愛の娘とその家族が何者かに惨殺されたことを知らされ、彼は犯人を探すべく総てを投げ打って単身マカオへ乗りこむ。
異国の地では犯人の正体を掴む術もなかったが、運命的に出会った3人の凄腕ヒットマン共に娘家族の仇を討とうとするが、復讐を誓った記憶さえも徐々に失い始める…”

 

香港・フランスによる合作映画で、主役のコステロを演じるのがジョニー・アリディ。

その彼と行動を共にする三人の殺し屋は、アンソニー・ウォン、ラム・シュ、ラム・カートンといったジョニー・トー監督作品常連組。

 

当初、この企画はアラン・ドロンで進んでいたものの脚本を読んだドロンから「このテの映画は若い時散々出たからあまり興味がない」と袖にされたものの、そこは天下のアランド・ロン。「もっと適役の男を紹介する」というんでジョニー・トー監督が紹介されたのがジョニー・アリディ。

ちなみに、彼が劇中で使うコルト・ダブルイーグル*1という拳銃はなんとアラン・ドロンの私物。本作に弟分のアリディが出演するということでプレゼントしたとか。

 

それはともかくとして。

 

『ザ・ミッション/非情の掟』や『エグザイル/絆』といったほとんど脚本もなく、気心の知れた役者を集めて状況説明だけ与えて即興芝居をさせて映画を一本作り上げる、というような無茶は今回さすがになく、良くも悪くも手堅いつくりのフィルムノワールになりました。

ジョニー・トー作品としては初心者向けの映画だけど、ファンからするとちょっと物足りない感じも。

でも、重厚な絵作りといい、非常に美しくてスタイリッシュな銃撃戦、男同士の熱い絆などは健在。しかも、今回はジョニー・トー監督作品にしては珍しく、女性が多い!

何と、メインキャラとして4人も出てくる!素晴らしい!*2

若干、脚本の運びに首をかしげるところがないでもないけれど、まあ、そんなに気にならない。ただ、万人向けではあるんだろうけど、眼鏡堂的にはちょっと人に勧めにくい。

(ちょっとネタバレ)

コステロの孫たちを殺した殺し屋たちにも家庭があり、それぞれ同じくらいの年齢の子供がいる、という場面に心がちょっとざわっとする。

あくまでも殺しはビジネスというドライな感覚ではあるけど、子供が殺されるシーンはやっぱり苦手。

 

一部で不評なジョニー・アリディの表情が読み取れない演技も、正直そういうキャラクターなんだと思えば気にならない。少なくとも、眼鏡堂はそうでした。

 

最終的にすべての復讐を終えて完全に記憶を失ったコステロが戻っていく場所。そこに本当の意味での彼の安住の地があるのかというのを投げかけられている気が。

改めて見返して思ったんだけど、ジョニー・トー監督って本当にジャン・ピエール=メルヴィルが大好きなんだな、と。

合間合間にある男たちのキャッキャ感が本作ではさらにボンクラ感を増しており、だからこそ殺し屋三人が死地に赴くゴミ捨て場のシーンの悲壮感が割り増しです。

 

ジョニー・アリディはゴダールの映画にも出ているそうなので、時間ができたら追悼の意味で見てみようかな?

 

【追記】

ジョニー・アリディは日本ではほとんど無名と言っていけど、フランスでは超大スター。日本で知られているとすれば、彼の元奥さんはフランスの名女優シルヴィ・ヴァルタンだったりする。

 

www.youtube.com

 

 

*1:アメリカのコルト社製の拳銃。M1911をベースに、無理やりダブルアクショントリガーシステムを内蔵させた失敗作。正直なところ、凄腕の殺し屋はまかり間違ってもこんな銃を使いません。

*2:『ザ・ミッション/非情の掟』では1人、『エグザイル/絆』ではエキストラを含めても3人という強烈な女っ気のなさ。