眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

この世界の片隅に

 

この世界の片隅に [DVD]
 

 年末年始は時間があるので、見逃してしまった映画をまとめ借りして観賞しようというどうしようもない休日の過ごし方を実行。

 

というわけで、『この世界の片隅に』です。

今さら何も言うことはない、というか昨年の書籍ベストに原作マンガを上げましたが、それにしてもこの作品の途轍もなさと言ったら……。

細密なキャラクター描画ではないにもかかわらず、画面の情報量が濃密。かといってそれが別に押しつけがましくないという。アニメを見ている、というよりは非常に細部にまで神経が行き届いた”映画”を見ているという感想。

アニメ作品としては2時間越えというはっきり言って長編の部類に入るにもかかわらず、あっという間に時間が過ぎ去ってしまう。

 

ひとりの個人(主役のすずさん)の目を通した戦中から戦後の激動を丁寧に、そして丹念に描いているからこそ、知らない間に日常を支配する戦争というものの恐ろしさが迫ってきます。

内容も原作にほぼ忠実(多少変わっているところや足されているところもある)。

その忠実さが原作に対するリスペクトに溢れていて、なるほど確かにクラウドファンディングで出資したくなるなあ、と思いました。

 

作中に出てくる〇年〇月という日付が、終盤になればなるほどその間隔が短くなっていくのに、ぞっとします。当たり前のこととはいえ、見ているこっちは昭和20年の8月に何が起きたのか知っているけれど、劇中の人物にとってそれは未来の話で知る由もなく。なので8月6日に広島の実家に帰ろうとするすずさんを前にして、見てるこっちは胸が苦しくなってきます。

 

戦争をしたい人間が戦争で死なないのに、戦争を望んでいない人間ばかりが犠牲になっていく、昔々から延々繰り返されてきたにもかかわらず、21世紀の今もそれが変わることなく続いてます。

本作ではそれを直接的に訴えたりはせず、見ている側がそれぞれで考えるようにもってくるのも口コミで人気が集まったり、絶賛された理由なのかもしれないと思いました。

個人的にはすずさんと旦那さんの初々しい新婚っぷりがこっぱずかしくもあり、うらやましくもあり。「この世界の片隅に、ウチを見つけてくれてありがとう」とか言われようものならもう大変ですよ!なんやこのウルトラかわいい嫁は!

 

となりのトトロ』と『火垂るの墓』の鬼の二本立てを一本に融合させた大傑作というのはまさにそう。ほんわかメルヘン風味と凶悪なまでに現実を突き付けてくる様は、鑑賞後ずーんと打ちのめされました。

特にすずさんが何か特別な人間ではなく、あの時代に生きていた(年齢的なことを考えるとまだ生きているかもしれない)ごくごく普通の女性であることも魅力の一つなのかもしれません。どこにでもいる人、どこにでもある家族、どこにでもある風景。だからこそ誰の身にも降りかかってくる戦争の怖さがわかるというか……。

 

もしかしてこれって、小学生~高校生、大学生とか集めて鑑賞させて、そのあとディスカッションとかさせるべき映画なのかもしれないという気がしてきた。

正直、事前の評価が高すぎる分、思いっきり構えてみてた部分があったんだけど、あっさり打ちのめされました。

できれば劇場で見とけばよかったと大反省した次第。