眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

シェイプ・オブ・ウォーター


『シェイプ・オブ・ウォーター』日本版予告編

 

映画館で観てきました。

『パンズラビリンス』や『パシフィック・リム』のギレルモ・デルトロ監督によるダークファンタジー。言葉を話せない女性と言葉を持たない半魚人とが心を通わせるオトナのラブストーリーです。デルトロ監督は本作でアカデミー監督賞と作品賞などを受賞しました。

 

町山さんのラジオとか予告編とかで「映画館で観たいなあ」と思っていて、実際に見るまでは「『大アマゾンの半魚人』のリメイクなんだろうなあ」というあまり期待度も高くなかったのですが、ホントにいい映画でした。

不幸ではないけれど、代わり映えのない生活を送る主人公のイライザが、半魚人と意思の疎通ができるようになっていくに従って、ほとんど黒づくめの服装に色が加わっていくと同時におしゃれになって笑顔も増えていくというのが、彼女の心の高揚をさりげなく描いていて、そこが一番印象的でした。

下手な監督とかだったら美男美女をそろえてしまうところを、あえて主人公側の登場人物が総じてモブ(群衆)というか、その他大勢で固められています。

これが実は重要で、デルトロ監督はメキシコ人なのでアメリカではマイノリティ。そういう少数者であってもいないわけではない、少数者やマイノリティでも確実に存在しているんだ、という無言のメッセージが垣間見えました。

その昔、リメイク版の『キャリー』で大失敗をやらかしたハリウッド*1も、同じ轍は踏まないというか、失敗から学んだんだな、と思うことにします。

 

終盤に行くまでに結構ギョッとするシーンがちょいちょいあって、正直デートムービーにはかなり厳しいところがあるような気がしました。だってボカシはあるし、裸も多めだし……。『美女と野獣』みたいな映画を想像してると、いい意味で期待を裏切られる作品でした。

かつて、タランティーノ監督が『ジャッキー・ブラウン』を撮ったとき、大人の映画だったのにあんまり受けなかったということがありました。『シェイプ・オブ・ウォーター』もそれまでのデルトロ監督の映画の中ではかなりの成熟具合があるにもかかわらず、ボンクラ度は確保されているという絶妙なバランス感覚。そのあたりがタランティーノと違うというか、最適なタイミングで作りえたのだろうな、と感じたところです。

 

タイトルの『シェイプ・オブ・ウォーター』は”水の形”という意味。もちろん、水には形がないわけで、それが愛や幸せの形はひとつではない、型にはめられたものではない、という意味なのかな、と思いました。あと、舞台設定が50年代なので、予習という意味でデヴィッド・リンチの『ブルーベルベット』も観ておくと、敵役であるエレインの成功に対する固執が読み取れるような気がします。表面化きれいで華やかだけど、裏側はドロドロしている悪夢の50年代という意味で。

 

優しくて楽しくて、でもちょっとほろ苦い大人の童話、という感じでもう一回みたいな、劇場で、と思いました。以上、おわり。

 

【追記】

マッチョでサドで女性差別、人種差別、職業差別の三拍子がそろっていて、ヘビのような粘着質で、パワハラでセクハラで、それでいて頭が超絶に悪い週刊文春による、上から目線のネガティブキャンペーンとしか思えない映画評。

『アンブロークン』は「監督が女だからという」理由でないこと並べて袋叩きにしたくせに、『ハクソーリッジ』にはだんまりを決め込んだ腰抜けで臆病な卑怯者どもらしい文章。恥を知れ!

bunshun.jp

 

*1:原作ではブスないじめられっ子なのにもかかわらず、全く逆のクロエ・グレース・モレッツをキャスティング。「あんなウルトラかわいいクロエちゃんはいじめられないよ!ってか、クロエちゃんがブスっていう設定に無理があるよ!」と世界中から総ツッコミが入りました。