眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

三日月少年漂流記/長野まゆみ

 

三日月少年漂流記 (河出文庫―BUNGEI Collection)

三日月少年漂流記 (河出文庫―BUNGEI Collection)

 

長野まゆみによる幻想小説。銅貨と水蓮の二人の少年が、盗まれた自動人形・三日月少年をめぐって不思議な冒険をする物語です。

 

最初に。

正直なところを白状してしまうと、こういったふんわりした幻想小説はあまり好みではないのです。幻想文学というものを読もうとするとき、眼鏡堂が最も欲するところは、甘美で強烈な毒。だから澁澤龍彦中井英夫マンディアルグバタイユの作品群が大好きなのです。かといって、今回取り上げた長野さんの作品は、”嫌い”ではない、というのが難しいところ。好みではないけれど、嫌いではない。なので、逐一新作をチェックする作家ではないし、手に入れてからずいぶん時間がたってから改めて手に取り、読んでみたのでした。

 

さて、そんな個人的なことは置いといて。

 

感覚としての詩と、表現形態としての小説とをクロスオーバーさせた作品を書く人、というのが眼鏡堂の作者に対する印象。ま、先入観と言ってもいいかも。

実際に読んでみると、いい悪いは別にして、その先入観は外れてなかったな、と。

併せて、(本作だけがそうなのかな?)全体を通してセピア色のノスタルジィに覆われています。その”セピア色のノスタルジィ”とは何かというと、眼鏡堂が感じたのは竹宮恵子萩尾望都に代表される往年の少女漫画や、宮沢賢治稲垣足穂の少年小説、そしてレイ・ブラッドペリや藤子・F・不二雄のSFのミックス。

特に核となっていると思ったのは、

風と木の詩竹宮恵子

トーマの心臓萩尾望都

風の又三郎宮沢賢治

『チョコレット稲垣足穂

 

と思いました。

 

この”セピア色のノスタルジィ”を構成するもの。

水蓮と銅貨に関わるものであれば、半ズボン、膝頭、チョコレート。

自動人形の三日月少年。三体のそれがいるのは博物館、百貨店、プラネタリウム

それらに代表されるように、非常にフェティッシュなくらいに整えられたいい意味で毒気を抜いたかわいい小説です。

ただ、良くも悪くも作者が女性であるせいか、子供たちだけで隣町に行く、という一日だけの冒険物語が、ずいぶん優等生的だなあ、と思いました。まあ、フィクション作品に不必要なリアリティを求める必要もないのだけど。

 

さて。

 

一日だけの冒険物語の主役は水蓮と銅貨という二人の少年なのですが、銅貨がつねに灰色の仔熊のぬいぐるみを持っているので、少年というよりも女の子(※少女、という表現よりも”女の子”という表現のほうが眼鏡堂にはしっくりくるのです)。

なので、二人の冒険は完全にボーイ・ミーツ・ガール。

具体的な表現はなかったと思うけど、絶対この二人美少年だよね。季節が初冬なのにあくまでも半ズボン、というところに、何やら業の深さを感じたのでした。

 

苦手苦手、といいつつ結構楽しめたのですが、ちょっと個人的な難点が。

まさか、本作が続編的位置づけのものだとは思わなかったさ。

『天体議会』を読んでから本作を、というレビューが続々あって「なるほど、イマイチよく飲み込めなかったのはそーいうわけか」と膝を打ったところです。

長野さんの作品は今回初めて読んだわけですが、思った以上に楽しめたので『天体議会』を読んでから再読してみようと思ったのでした。以上、おわり。

 

【追記】

今回引用した作品群はこちら。

新編 風の又三郎 (新潮文庫)

新編 風の又三郎 (新潮文庫)

 
一千一秒物語 (新潮文庫)

一千一秒物語 (新潮文庫)

 
天体議会(プラネット・ブルー)

天体議会(プラネット・ブルー)