眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

犬を飼う/谷口ジロー

孤独のグルメ』や『事件屋稼業 』で知られる谷口ジローさんのエッセイコミック。

本作で第37回小学館漫画賞審査員特別賞を受賞しました。

内容は非常に簡潔で、

  1. ジローの飼ってた犬が死ぬ話
  2. ジローが新たに猫を飼う話

の(ほかにも話はあるけど)二本立て。

 

タイトルの一つである『犬を飼う』は、ジローの飼っていた老犬の最期を看取る話。

内容はただそれだけ。

ただ、この話が非常によくできている。

起承転結や何かしらのドラマティックなものがあるわけでもないのに、非常に感情が振るわされます。

犬種や室内飼いか外飼いかでも変わりますが、犬の平均寿命はおおよそ13~15年。10年一生と言われたひと昔に比べると、医療や飼育法の発達、食べ物の改良などから、ずいぶんと寿命が延びたことがわかります。

半面、人間の長寿化がそうであるように、高齢による足腰の衰えや痴ほうなどが老犬によって非常に大きな問題となっているのもまた事実です。

作中に出てくる犬の年齢は15歳。飼い犬としては十分な高齢といえます。

眼鏡堂もかつて犬を飼っていて、最後まで看取ったことを思い出しました。

老いが迫ってきて、遠くない将来死んでしまう、というのがわかっていて、それでもただの犬だし、そんなにショックを受けることはないだろう、と思っていました。

しかし、実際に一つの命が消えていくのを目の当たりにすると、声も涙も出ないくらいにショックを受けました。

それ以来、どうにも動物を飼う気にならない(魚とかも含めて)のです。

「たかがペットでしょ」と思う人もあるでしょうが、こればかりは実際に飼ったことのある人でないと真に理解するのは難しいかも。ペット=愛玩動物ではなく、飼っているうちに、それが”飼っている”ということから”共に暮らす”という段階へと変わり家族の一員となるのです。

 

そして、次が『そして…猫を飼う』。

二度と生き物は飼うまい、と決意していたジローのもとに猫が運ばれ、ひょんなことから飼う羽目になり、子猫まで生まれ……というお話。

これもまた、淡々と話が進んでいくのですが、リアルに感じるのは、死んだ犬の小屋が片付けられるでもなくそのままにされているところ。我が家もそうで、10年近くただただそのままにしていました。ある意味、飼っていた犬のことを吹っ切るようにして片付けたのもそれなりに最近のことでした。

さて。

犬の時とうって変わって、こっちは新しい命の誕生の話。本当だったらすべて自分のところで飼うことができればいいのだろうけれど、生まれた一匹をよそにあげることに。

突然いなくなった子猫を探しながら、親猫がやがてあきらめるものの、それでも時折わが子を探すところは、その前が看取りの話だっただけに、心が痛みます。

この話を読んでいて思い浮かんだのは、内田百閒の小説『ノラや』。

ひょうひょうとしながらも対象物である生き物への暖かい視線が、百閒の小説を読んでいるかのように感じました。

 

いずれにせよ、生き物を飼うということはその命に対して最後まで責任を持つということ。生き物である以上、ただカワイイカワイイだけでは済まないことも多々あります。

それを踏まえたうえで、飼う=その命に対して責任を持つ、ことが成り立つのではないかと思うのです。ペットと暮らす、というエッセイ漫画が多数あふれる中で、きれいごとではない部分をしっかりと、そして教訓めかすことなく描かれているところが、これからペットを飼おうという人、あるいは現在進行形でペットを飼っている人には必ず読んでほしい作品だと思いました。以上、おわり。

 

【追記 その1】

今回取り上げた作品群はコチラ。

 

孤独のグルメ 【新装版】

孤独のグルメ 【新装版】

 
ノラや (中公文庫)

ノラや (中公文庫)

 

 

【追記 その2】

書いておかないといけないと思った『犬と私の10の約束


犬と私の10の約束