眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

魔界探偵冥王星O ウォーキングのW/越前魔太郎

魔界探偵冥王星O―ウォーキングのW (電撃文庫)

魔界探偵冥王星O―ウォーキングのW (電撃文庫)

 

覆面作家越前魔太郎によるライトノベル

あらすじは、

僕の街の近くに、隕石が落ちた。同級生のワル(悪いことをするからワル)の提案で、深夜に家を抜け出して、それを見に行くことになった。ワルが、車いすであまり学校に来ない椎野君も誘って、いざ出陣となる。隕石が落ちた森の中まで、夜のピクニック。僕はこのとき、漫画でよくある冒険みたいでちょっとドキドキしていた。森の中で、あんな不思議で怖い出来事が待ち構えているとは知らずに。ふと、街で蔓延している変な合い言葉を思い出し口ずさんだ。メーオーセーオー。メーオーセーオー。

 

ぱっと見は、少年たちの日常からちょっと背伸びした冒険譚(『スタンド・バイミー』以上『グーニーズ』未満みたいな)だし、小学生たちのパートはまさにそれ。

そして並行して語られる(同時進行ではない、というところがひっかけポイント)探偵「冥王星O」の物語。どちらも街の近くに落ちた隕石を軸にして話が進んでいくのだけれど、その二つの物語がかみ合わせが悪いというか、平行に進んでいるようなのに収まりが悪い。もちろん、そこには読了して初めてわかる仕掛けがあるのですが。

 

冥王星Oの物語よりも、個人的には主人公たち小学生サイドの物語のほうがひきつけられます。主人公の御家聡明はじめ、クラスメイトのワル、車いすの椎野くんというキャラクターの立った三人での隕石を見に行くくだりのわくわく感が楽しかったです。眼鏡堂は聡明くんの兄貴分というか親分みたいな(ガキ大将といったほうがいいかも)のワルのキャラクターが特に好きで、最近読んだからかもしれないけれど『ルドルフとイッパイアッテナ』のイッパイアッテナを思い出しました。

 

冥王星Oに指示を出す【窓を作る男】といい、冥王星Oが追う【空を歩く男】といいネーミングセンスが突き抜けていて、合わせて、その”奴ら”という存在を表すくくりと非人間的な存在感とが相まってタイトルにあるような”魔界探偵”という厨二病もはなはだしい冠が、逆に作品世界の中で地に足がついたような印象。こんな異物というほかないシロモノを自然な形で、かつ都市伝説的な位置づけで登場させられるというのは、読んでいてその才能がうらやましいと思いました。

 

ひところのライトノベルといえば、「字で読むマンガ」などと揶揄されてセリフや擬音で露骨にページを稼いで物語をでっちあげていたものですが*1、かなり久しぶりにラノベを読むと、その質の上がり方に驚かされるばかり。まあ、考えてみればあの当時から優れた作品、深沢美潮さんの『フォーチュン・クエスト』シリーズとか、水野良さんの『ロードス島戦記』シリーズとか、秋田禎信さんの『魔術師オーフェンはぐれ旅』シリーズとか、竹河聖さんの『風の大陸』シリーズとかがあったなあ、と思い出に浸ってみたりします。ちなみに、あの当時のラノベで好きだったのは庄司卓さんの『宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』シリーズ。作中に登場するゲームネタやアニメネタがまさにドンピシャ。登場人物たちとほぼ同い年だったしねえ……(遠い目)

 

そんなこんなで、久方ぶりのラノベということでナメてかかっていたのですが、そんな先入観を軽々と覆すくらいに面白かったです。多少、設定的な部分でついていけないものを感じつつも、十分満足でした。

ただ、惜しむらくはなかなかこのシリーズが手に入らないんだよなあ。以上、おわり。

 

【追記】

本作の越前魔太郎先生の中の人はこの人だ!

*1:一時期のあかほりさとる作品がまさにそうで、「ページの下半分がメモ帳に使える」と皮肉られたりもしたものです。