眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

英霊の聲/三島由紀夫

英霊の聲 オリジナル版 (河出文庫)

英霊の聲 オリジナル版 (河出文庫)

 

 今回取り上げるのは、数ある三島由紀夫作品の中から少々異色な『英霊の聲』を。

ざっとあらすじというか内容を紹介すると、帰神(かむがかり)の儀式で呼び出されたのは、226事件で死んだ青年将校の霊と、特攻で死んだ兵士の霊。彼らが語る国への忠節と、彼らの目に映る堕落した戦後の平和のやるかたない怒り、が切々と語られる、という話。

正直、筋というほどの筋もなく、帰神=イタコの口寄せの儀式の中で起きた顛末が壮麗な美文でしたためられている、というもの。

少々うがった見方をすると、三島由紀夫という人はオカルト方面への興味が強く、そのうえすべて事実だ、と信じ込んでしまう人だったよう。*1だから、空飛ぶ円盤とか宇宙人とかを臆面もなく前面に打ち出した小説『美しい星』を発表し、世間を困惑させたりもしました。

なので、ある意味こういう口寄せ的なものに興味を惹かれるのは当然のことなのかも。

儀式の異常なリアリティーは興味があるからなせる業、ということで。

 

まあ、それはそれとして。

 

直接的に語られるわけではないにせよ、この帰神の儀式によって寄せられた青年たちの言葉の端々から垣間見える怒りや無念、悔恨は如何ばかりか。
それは必ずしも戦争(や昭和維新で)心ならずも命を落とさざるを得なかったことばかりではなく、自分たちが命を捨ててまで守ろうとしたものは、果たしてこんなものであったのか、ということへの懐疑であり怒り。
のち、これは赤坂憲雄先生が寄稿した文章を原作の一つとして完成した『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』へと結実します。そのなかで、「なぜゴジラは皇居を襲わないのか?」についてのひとつの回答にもなっています。

 

正直に言うと、作品自体の分量のわりに非常に強力な”圧”があるのは確か。
この”圧”に対抗できるかどうか?というのが本作への評価の一端を担うような気も。
んでもって、やっとこさこの『英霊の聲』をヒイヒイ言いながら読破した後に待ち受けるのが『憂国』。
……はっきり言わせてほしい。勘弁してくれ、と。

以上、おわり。

 

【追記】

せっかくなので、楯の会の歌をBGMにして『英霊の聲』を読めばいいじゃない(提案)


起て!紅の若き獅子たち (高音質ハイレゾ)

*1:澁澤龍彦氏によると、一時期三島氏がご執心だったのがこっくりさん。三島邸で行われたこっくりさんにたまたま澁澤氏が同席、こっくりさんがはじまるものの一向に狐が降りてこず、三島氏が脂汗を流しながら真剣に呪文を唱える様を見て思わず参加者の一人が吹き出してしまうと、「不謹慎ですぞ!」と激怒したとか。