眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り/坪内祐三

慶応三年生まれ七人の旋毛曲り―漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代

慶応三年生まれ七人の旋毛曲り―漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代

  • 作者:坪内 祐三
  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: ハードカバー
 

 慶応三年生まれの七人(夏目漱石宮武外骨南方熊楠幸田露伴正岡子規尾崎紅葉斎藤緑雨)を軸に、明治時代の創成期を俯瞰してみせるノンフィクション。

どうでもいいことだが、斎藤緑雨だけ、PCで一発変換されないことに憤りを禁じ得ない眼鏡堂でした。

 

結論から言うと、漱石が小説家になるところまでは描かれず、また、海外へ飛び出した熊楠は最後まで日本に帰ってきません。この本の中では。

なので、特に熊楠に関しては、何かネタに困ると「アイツは何してんだ?アイツだよ、アイツ」とばかりに、明治時代の潮流と全く関係ない文脈でアメリカでブイブイ言わせている熊楠が登場、という坪内先生の持ちネタが面白いです。

 

個人的に注目すべきは、明治憲法発布時に不敬罪で逮捕された宮武外骨

この一件で、いかに宮武外骨という人物が勘違いされているかわかります。

例の不敬罪で、「反権力、反政府」の気骨ある人物、と思われてますが、繰り返しますがそれは大きな勘違い。
外骨自身が言うように、彼は自信が主筆を務めた滑稽新聞の中で「反権力の記事を書いたことも、反権力の姿勢をとったこともない」と断言しており、出獄後、自由民権運動家に同志呼ばわりされたことについて「甚だ不愉快である」とバッサリ。

むしろ、自由民権運動なるものの上辺だけの実体のなさに冷笑を加えています。

まあ、そんなことはともかく。

本書を読んで一番楽しいのが、人と人との結びつき。
今と違ってSNSなんて全くなかった当時、とにかく人と人とをつなぐのは直接会うか、よくて手紙。もちろんすれ違いも日常茶飯事。そんな中で、年齢もキャリアも全く異なる者同士がつながっていくのはとてもとても興味深い。

約二十歳の年齢差がある依田学海(森鴎外の漢学の師匠であり、幸田露伴を文壇に送った大重鎮)と、当時気鋭の若手小説家だった坪内逍遥とを繋いだのが、二十歳そこそこの宮武外骨だったというくだりはとてもとても面白い。

それに代表されるように、七人それぞれが悩み、苦しみ、喜び、調子に乗って明治という時代を闊歩していくのは圧巻のスケール。
題材のわりに文体が軽いし、引用文もそれほど読みにくくもない。

国語便覧とかを夢中で読んだ覚えのある人なら、夢中になれるはず。そんな一冊です。以上、おわり。