町山&柳下の”ファビュラス・バーカーボーイズ”による映画メッタ斬り批評集。
洋画邦画、大作、傑作、大コケ作を全く問わず、イイところはイイ、ダメなもんはダメという極めてまっとうな感覚に基づく映画批評、というか映画駄話傑作選。
ダラダラとくだらないことをただひたすらにくっちゃべるだけの活字漫才なので、アカデミックな町山さんや、知的な柳下さんを期待してはいけない。
発言によっては、本当にこの人たちは大丈夫なのか?(※町山さんは早稲田法学部卒、柳下さんは東大工学部卒)と思うこともしばしば。
基本的にこの本は映画駄話であって、映画批評ではない。
なので、『コヨーテアグリー』という映画を二人が絶賛するのだが、なんと二人とも見ていない(笑)。そんないい加減さが駄話の駄話たる所以。これくらいでイラっとくる人はたぶんこの本を読まない方がいいだろう。
なお、町山&柳下コンビが絶賛の映画は『チャーリーズ・エンジェル』。
大の大人が、”ビキニにお尻、裸にクンフー”で大喜びという極めて健全な高評価。
うん、あの映画は確かに最高だ。
こんな調子なので、相手が大監督であろうと容赦なし。
ルーカスに落胆し、シャマランに頭を抱え、宮崎駿をロリコン呼ばわりし、マイケル・ベイをバカにする。
それらは、映画評論家の仕事というよりイチ映画ファンの率直な感想。
『千と千尋の神隠し』における”駿ロリコン説”はオイラもそう思った。
女の子がいる家庭で見せちゃだめだよ、あの映画。
洋画でさえこんな調子なので、邦画は暗澹たる評価。
なんと1本も褒められていない。
当時ですらそうだったのが、現在はなおひどい。
”これが大多数の観客の望むものなのだ!!””話題の大ヒット間違いなし!!”と勘違いして作られる誰得映画の数々。
・体脂肪計とダイエットレシピがヒットしたことで作られた『体脂肪計タニタの社員食堂』
・ビッグダディの元嫁を、洗脳騒動で話題の人となったオセロ中島が演じる『ハダカの美奈子』
『痛快!ビッグダディ』を映画化! 【ハダカの美奈子】 特報映像 2013年11月9日(土)公開 - YouTube
・ポチたまの人気コーナーを、当人ではなくスマップ香取で映画化した『LOVEまさお君が行く!』
CM] 香取慎吾 広末涼子 映画「LOVE まさお君が行く!」6月23日(土)全国ロード ...
・新人声優とニコニコ動画の歌い手(※一般人です)がサバイバルゲームで遊ぶさまをわざわざ有料で劇場公開した『劇場版ワルノリっ』
<後半が非常にキモい予告編はコチラから>
どんな判断から金と時間と労力をドブに突っ込んでるのか知らないが、
日本は不況だデフレだ増税だと言われている割には、エンタメ業界のこういう現状を見ていると”ああ、カネがあるところにはカネがあるんだな”と思ったりする。
イイ映画はどこがイイのか、というのは多くの批評家がやることだ。
でも、ダメな映画はドコがダメなのか、について批評する人は少ない。
まして、実際に見た上ならなおさらだ。
少なくとも、その姿勢は製作会社からの依頼で見てもいない映画を絶賛したどこかの映画評論家よりははるかにすばらしい。
余談だが、町山さんにも同種の依頼があったが蹴ったそう。その映画がコレ。
ともあれ、映画好きの中学生がそのまま大人になったような、非常に知能指数の低い本(笑)。あとがきで、ライムスターの宇多丸さんが一生懸命フォローしているのが逆に気の毒な気もしてくる。
個人的に、いつもクールな柳下さんが我々の思っている以上にブレーキの壊れたダンプカーだということが分かったのでよかった、と思う。
一方の町山さんは……まあ平常運転だ。
映画愛にあふれている、というのはきっとこういうことも言うのだろう。多分。
映画評論家という職業人としてはどうかと思うが(笑)
【追記】
身銭を切って地雷映画を見に行き、それを真面目に批評するという、孤高の苦行にいそしんだ柳下さんの記録が書籍化されました。
皆、括目して見よ!!