眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

ちゃんと食えば、幸せになる/水木しげる

ちゃんと食えば、幸せになる―水木三兄弟の日々是元気

ちゃんと食えば、幸せになる―水木三兄弟の日々是元気

 

ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』などで知られる漫画家、水木しげるとその兄弟による食を巡るエッセイ(?)。

水木三兄弟は、長男の宗平(92)、次男のしげる(90)、三男幸生(88)*1。テレビでよく目にするしげる先生の健康と旺盛な食欲はみんなの広く知るとkろおですが、彼のお兄さん、或いは弟さんも負けず劣らず。

年齢から考えると、食事も枯淡の域というか純和食&粗食によって健康が保たれているのでは?と考えがちなのが、我々凡人の凡人たるところ。

三人そろって好きなものは洋食。オムライスやドリアは週に何回食べてもOKという始末。とにもかくにも、よく食べる。

食は健康の源であると同時に、人間の三大欲求の一つ。

それを考えるとしげる先生はとにかくよく食べる。

本作に掲載されていないものをざっと上げると、マックのテキサスバーガーやクウォーターパウンド・バーガー、スタ丼、スタバのコーヒーなど、とても90代の飲食とは思えない(笑)。ガリガリ君は1日に何本食べてもおなかを壊さないし、行きつけのお店はローソン。モダンというか、とにかく好奇心が旺盛。特に食べ物については、本人が「こりゃうまそうだ」と思ったら挑戦せずにはいられない感じ。

みずき先生曰く、長寿健康の秘密は、

  • 進取の気持ちを失わない
  • 好きなものを食べる
  • よく寝る

の三つ。

故に、「私に健康法はない。しかるに”無病”」という結論に至るのです。

好き嫌いなく、出されたものは食べる、というスタンスは、これまた皆さんご存知のように、ニューギニア戦線での飢餓状態の経験から。飢えて死んでいった戦友たちの顔がよぎるからこそ、好き嫌いで食べ物を無駄にできない。それが貫かれているからこそ、とにかくよく食べる。

とはいいながらも、しげる先生だって人間。やっぱ嫌いなものもあるのです。

本作で上がっているのは、酒、てんぷら、ブリ、マグロ、懐石料理、パンの耳。

酒や懐石料理、パンの耳はまだしも、てんぷら、ブリ、マグロは体に良いとされているものが嫌い。ほかにも管理栄養士的に体に良いとされるものが思いのほか少ない。

菓子パンにお菓子にインスタントラーメン、極めつけはたばこと不健康の極みのようなものも大好き。

これらをざっと俯瞰してみて思うのは、健康長寿というのはどういう生活を送るのか?という規範ではなくて、当人自身に備わった素養ではないか?ということ。

水木三兄弟よりももっと健康的で規範的な生活を送っているのに早く死ぬ人もいるし、その逆もまたしかり。もちろん、その逆もありふれているし。

長寿というのは結果論でしかないし、健康という言葉の指し示すところはきわめて主観的なもの。客観的に不健康に見えても、当人にとってはもっとも健康的な生活だったりもするし。

要するに、何物にも流されず、しかし、心の門戸を開いて好奇心を失わないということがすなわち健康なのではなかろうかと思った次第です。

 

……とまあ、ここまで書くとなかなかよろしい本のように思えるのですが、こっから先は少々厳しいことを書こうと思います。

まず、本書の初出は2012年。NHKのドラマ『ゲゲゲの女房』が放送されていたのが2010であったことを考えると、完全にブームに便乗した安易な企画。

中身の大半が過去作品からの引用だし、談話の内容も非常に薄いうえに、本当に談話がなされたのか疑わしい。そのくらいに内容が薄い。フォローするなら、この保険同人社という会社がいわゆる医療本の出版社であって、こういったエッセイ本を得意とする会社ではない、と言えなくもないのですが、それにしたところで結論が行方不明なフラフラ感が一層本書の雑さと志の低さが見られてなりません。

サッと読むにはホントにサッと読めるお手軽な一冊ですが、眼鏡堂としてはそういったお手軽感は求めていないのですよ。何度読んでも、水木しげるという人物の人柄が全く見えてこないあたりも(単なる長生きでユニークなおじいちゃんという枠組みを全く超えてこない)、水木しげるファンとしては非常に落胆します。こんなスカスカな本も久しぶりに読んだなあ、と思いました。以上、おわり。

 

追記

しげる先生の故郷である鳥取県境港市。その観光協会で行われた第2回妖怪人気投票では、砂かけ婆、こなき爺を押さえ、しげる先生が見事トップ10にランクイン!

世間ではしげる先生は妖怪として認識されている模様

第2回妖怪人気投票

*1:年齢は2012年当時のもの。