眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

食人族

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季節は秋。秋といえば、食欲の秋!

というわけで、食欲の秋にふさわしい映画で楽しもう!というのが今回の企画。

題して、”秋だ!モグモグ !人喰い映画祭り”!!

全三回でお送りしようというこの人喰い映画祭り。

最終回となる3回目は、食人映画のクラシック中のクラシック!

名作にして傑作、ルッジェロ・デオダート監督の『食人族』を取り上げます!

 

映画『食人族』といえば、タイトルがすべてを語っている映画としてつとに有名。

その内容をざっくり一言で解説すると、

アマゾンの奥地には食人族が住んでいて、ムシャムシャモグモグと食べられてしまいましたとさ。おしまい。

という『指輪物語』もかくやと言わんばかりの夢と希望にあふれたファンタジー映画です。あらすじは、めんどくさいのでウィキペディアを見ればいいじゃない

 

公開当時から現在まで、この作品が根強い人気を持つのは眼鏡堂の感覚では、極端すぎるくらいの見世物趣味具合。公開が80年ということを踏まえても、非常に斬新。のちに『パラノーマル・アクティビティ』に結実するモキュメンタリー方式(フェイクドキュメンタリー)を採用。そのうえ当時の宣伝でも、徹底して「これは現実におこったドキュメンタリー映画です!」と銘打ってみたりとやりたい放題。

本作における食人の扱いは実に直球。

原始社会や非文明化、ひいては野蛮の象徴。

実際、人食いを表す言葉”カニバリズム”の語源は、カリブ族が食人行為を行っているらしい、というところから出発しており、つまるところ西洋キリスト教の倫理観から外れた蛮族の風習、という今現在ならポリティカリーコレクトがどうこうという問題に十分発展しそうな具合です。

実際、こういった未開の地での野蛮な、あるいは珍奇な風習を見世物として映画化して見せるという行為は、本作の監督であるルッジェロ・デオダートが初めてではありません。70年代に一世を風靡したグァルティエロ・ヤコペッティ監督による一連のモンド映画にその原点を求めることができます。モンド映画とは何か?というと、よくテレビでやっているような『衝撃映像100連発!!』みたいな刺激的な惹句と映像とを組み合わせて作った一種のヤラセ映画と考えてもらってよいかと思います。

そういった先達の手法を手本にしつつ、よりエクストリームにアップデートしてみせたデオダート監督はさすがとしか言いようがありません。

 

なんだかんだ言いつつ、この食人映画(イタリアン・カニバル・ムービー)はほんのわずかな期間ではあれ、一世を風靡したジャンルであるのは間違いありません。事実、この『食人族』は公開当時の興行収入であの『ET』としのぎを削ったことで知られています。アマゾンの奥地、グリーン・インフェルノと言われる最深部を舞台としているのですが、そういった一種の未開の秘境にはあくなき憧憬を感じるのは人間として当然のこと。当時にしてみればそういう地域にホイホイ行けるわけでもないので、そんな”世界を旅してみたいわ♪”的な欲求に答えるように、やれコブラマングースだとか彩鮮やかなオウムだとか、リスざるの群れだとかが登場し、ジャングル風味をグイグイ醸し出してくれます。

 

んで。

 

この『食人族』という映画についてまわるものとして有名なのは、”実際に動物を屠殺しているシーンがある”というところ。食人の部分はまあいろんなギミックを駆使しているにせよ、この動物殺しはフェイクなしの本物です。ただ、これもひとくさりあって、ただ殺した、というのではなくて、ジャングルを進む中での食糧調達として動物を殺すのです。食肉を得るためには動物を殺さなければ得られないので、仕方のない行為ではあるのです。まあ、当時もそれが問題となり裁判まで行ったわけですが、結局食肉を得るための行為としてやむを得なかった、という結論に至って無罪の判決を得ました。

改めて当該シーンをみると、例えば『ゴールデン・カムイ』や『山賊ダイアリー』に描かれている、命を食べるということについて直球の映像とともに考えさせられるのでした。

 

ただ、これが理解できないバカがこの世の中には存在するらしく、

動物を殺すシーンがあるけしからん映画を売り物にすべきではない。

とかネットショッピング大手のアマゾンに垂れ込んだ連中とそれに同調したアンポンタンどものせいで、アマゾンを舞台にした映画がアマゾンで買えない、という何を上手いこと言ってんだ!という非常に残念な結果になってしまいました。*1

単なる絵面でグズグズ文句をいうのなら、真に問題なのは動物を殺すシーンが本物、とうよりも露骨にエクストリームなシーンとして、(多分)アミン政権下のアフリカで行われた銃殺シーンが登場するのですが、これもまた本物。

……そこだけ見ると完全にスナッフフィルムじゃねえか。

 

何はともあれ、白眉はラストのセリフ。

「食人族と文明人、本当に野蛮なのはどちらなのだろう?」

 

眼鏡堂的な見どころは、このリズ・オルトラーニの超がつくくらいに流麗な音楽にのせて展開する超えげつないシーンです。ぜひ、心臓のか弱い淑女の皆さんが興味本位で見て、1週間ぐらい眠れなくなればいいなと思いました。以上、おわり。

 

【追記 その1】

というわけで、劇中で流れるリズ・オルトラーニの名曲『モア』

まったく、心洗われるような名曲だ。
 

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Alfred Tyros 4 - More (Riz Ortolani)

 

【追記 その2】

今回引用した作品群はコチラ。

世界残酷物語 [DVD]

世界残酷物語 [DVD]

 
E.T. (字幕版)

E.T. (字幕版)

 
食人族2 [DVD]

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山賊ダイアリー(1) (イブニングコミックス)

山賊ダイアリー(1) (イブニングコミックス)

 

 

*1:そのくせ『食人族2』とか『グリーン・インフェルノ』は余裕で買えるあたり、アホのソーシャル・ジャスティス・ウォリアーの間抜けぶりが際立ちます。