眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳/石川博品

 ライトノベル作家石川博品による”耳刈ネルリシリーズ”3部作の1作目。本作で第10回エンターブレインえんため大賞小説部門優秀賞を受賞した。

あらすじは、

主人公のレイチは、父親のコネで全寮制の“八高”に入学する。連邦各地から様々な国の人たちが集まってくるこの学校で、彼はシャーリック王国の王女、ネルリと出会った。二百年近く昔、共和国時代に反乱を起こし、捕虜の耳を刈り取ったことから、「耳刈ネルリ」と呼ばれ恐れられた逆賊の末裔だ。

レイチは騒がしい学園生活を送るうち、文化的背景の違いに戸惑いながらも、彼女に惹かれていく。(Wikiより転載)

 

本作の内容は、一言でいうと学園ラブコメ。全寮制の学園を舞台に学園内の不条理に対して協力し合って立ち向かう、というボーイ・ミーツ・ガール。

はっきり言って、それ自体はライトノベルの世界では全く珍しくありません。むしろ、こってりと手垢にまみれた感すらあるほど。

たしかに、本作の本筋は手垢まみれたそれなのですが、特異な点はそのありふれたまでの本筋を装飾する、非常に特異な言語感覚です。

 

この動画↓↓

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でも言及されているように、”OSがラノベで、日本語変換システムがネットスラング”とうのがまさにドンピシャ。

この非常に特異な言語感覚によって形成される作品世界は、非常にありふれた内容でありながら他に類を見ない突き抜けたオリジナリティを見せています。

と書いてしまうと、文章があまりにも特殊であるが故に”読めない小説”なんじゃないか、とも思いがち。でも、実際に読んでみると、たしかにその特異な言語感覚が故に頭がグワングワンさせられながらも、全く普通に読めるという点で、やはり特異な作品であると言わざるを得ません。

 

一時期のラノベのイメージは、字で読むマンガ。

擬音やセリフでストーリーをつないで書きとばしたような作品が結構な割合を占めていたような気がします。……というか、全盛期のあかほりさとる作品がまさにそうでした。あと、神坂一の『スレイヤーズ』の外伝や秋田禎信の『魔術師オーフェン』シリーズの外伝とか。

それゆえにライトノベルは一般の文学(小説)よりも下に見られてたものです。

この作品『耳刈ネルリ』も表紙やタイトルが完全に西尾維新的な印象を受けたので、中身もそれなりなのだろうと思ったのですが、実際読んでみると全くそんなことはないという。

キャラクターの立ち具合といい、単純なストーリーをグラグラと揺さぶりにかかってくるオリジナリティあふれる文体といい、最近のラノベのレベルの上がり具合はただただ驚くばかり。

 

……と、なんだかんだ書きながら具体的な本の内容を全く書いていないのですが、それは実際にあの特殊な文体を実際に手に取って読んでほしいから。

確かにワケワカンネな文体がちょくちょく挟み込まれながらも、その文章自体が語らんとする内容なすぱっと理解できる、という結構攻めたオリジナリティ。

でも、これでさえもう10年前のラノベなんだね。

……今のラノベの最先端って、どんな風になってんだろ?知りたいような、知りたくないような。以上、おわり。