眼鏡堂書店

積み上げられた未読本の消化と、ホラー映画100本ノックを目指すブログ。不定期更新のゆるゆるです。

澁澤龍彦の少年世界/澁澤幸子

澁澤龍彦の少年世界

澁澤龍彦の少年世界

 

仏文学者・澁澤龍彦実妹、幸子さんによるエッセイ。
澁澤龍彦澁澤龍彦となる以前、つまりは本名の『澁澤龍雄』だった頃の回想が主に語られるわけなのだが……。

 

熱心な澁澤ファンの眼鏡堂なのですが、正直、この本は少々いただけないものが多々。

この感覚をもっともよく理解していただけそうなのは、多分、三島由紀夫ファンの皆様ではないかと。ファンにとって知りたいのはあくまで『三島由紀夫』であって、『平岡公威』ではないのです。

それと同じように、こちとら澁澤龍彦が見たいのであって、澁澤龍雄さんの日常生活なんて別に知りたくないのですよ!

まあ、たしかに幼少時からの抜群の記憶力だとか、エッセイに描かれていることを再び肉親の視点からとらえなおす、というのは確かに新鮮ではあるし、澁澤家の系譜(特に渋沢栄一との親族関係)について詳らかにされるのは、新紙幣のデザインが決まった現在ではなかなかに興味深い。

 

でも、やっぱいただけないよ。この本。

それは肉親の強みともいえるかもしれないけど、「エッセイでお兄ちゃんはあーいうコト書いてたけど、実はこうなのよ。アタシ知ってるし」みたいな内情暴露がバンバン積み上げられる始末。これが読み手としては非常に不快&不愉快。結論から言うと、読者はそんなものをビタイチ求めてないのですよ。出版社も集英社という澁澤龍彦と全く接点がないといってよい出版社だけに、その辺の読者心理が書き手も編集者もまったく想定していなかった模様。

 

加えて、それは女兄弟だからこその心理なのか、澁澤さんの前妻・矢川澄子さんへの当たりが強いこと強いこと。どう考えても彼女のことは避けて通れないはずなのにばっさりカット。わずかに書かれても、悪意がありあり。本書を読めばわかるように、筆者はお兄ちゃんにべったりなので、その最愛のお兄ちゃんがよその女に取られた挙句、同じ屋根の下で暮らすことに我慢ならなかった模様。それが個人的にすごくイヤ。
ことに、後妻の龍子さんには好意的な記述がなされるだけに、余計にイヤ。

 

なんか、男として重々理解したのは、オカンと女兄弟はいつまでたっても男の敵なんだなあ、ということ。あの連中は、ちっちゃいときのやらかしを鮮明に&未来永劫覚えてる上に、どこでもベラベラ喋って回るからな!